2001年12月16日「第3回特別演奏会」
プログラム巻頭言


皆様、本日は暮れのお忙しい中、ようこそ私たちの演奏会においでくださいました。

今回の第3回特別演奏会「クリスマス・コンサート」は、「たまには、クリス マスの明るい曲を、屈託なく高らかに歌い上げてみよう!」という、 実に単純な欲求に基づいて企画されたものです。普段の定期演奏会ではなかなか 演奏できなかった、しかしいつかは演奏してみたかった曲を集めてのコンサートとな りました。特に後半のステージに置かれたバッハのモテット《主に向かいて新しき 歌をうたえ》は、その技術的難度と規模から演奏会にかけることをためらい続けてきたの ですが、今回初めて演奏することができ、大変に嬉しく思っております。

さらに、当団の客演としてお馴染みとなりましたヴィオラ・ダ・ガンバの福沢宏さん、 そしてバッハ・コレギウム・ジャパンなどで活躍中のオルガニスト、今井奈緒子さん が特別にステージを組んでくださることも、この演奏会の特筆すべき出来事です。 聖夜を間近にひかえた今宵を彩るお二人の妙技を、心ゆくまでお楽しみください。

21世紀の始まりは、世界的規模の恨みと復讐の血の色によって染められました。 国内では意外とも思われる政権交代の後も、「失われた10年」の精算が思うに任せ ない状況が続いています。スコラ・カントールムは、まさしくその混迷の10年間と歩み をともにして参りました。私たちの奏でる音楽が、こうした世界の中でどういった意味を 持ち得るのか、それは誰にもわかりません。しかし、アマチュアの一集団が紡ぎ出す 拙い音色に熱心に耳を傾けてくださる皆様が、この12年間途切れることなく存在した ことも厳然たる事実です。私はキリスト教徒ではありませんが、この救世主降誕のよき 日に、また皆様をお迎えして喜ばしいひとときを過ごせることを心から感謝しております。

さあ、救世主の誕生を言祝ぎ、皆で喜びをともに致しましょう。そして来るべき新しい 一年が祝福に満ちたものでありますように。


2001年12月16日
合唱団スコラ・カントールム代表
野中 裕


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