2002年3月30日「第11回定期演奏会」
プログラム巻頭言


皆様、本日はようこそスコラ・カントールムの第11回定期演奏会にお越しくださいました。

今回はチャレンジ精神を全面に押し出した企画となりました。前半で演奏するバード「グレイト・サーヴィス」は全曲の演奏に約45分を要する大作です。二手に分かれた合唱団が互いに呼び交わすポリフォニーの波は、しばしば聴くものを陶酔に誘います。その反面、演奏する側にとっては緊張感の維持だけでもひと苦労です。それでも、これだけの充実した作品が滅多に演奏されず、また過去の録音もほとんど手に入らないという状況の中、ぜひ歌ってみたいという団員の圧倒的な声によってこの曲を選びました。一方、後半で演奏するメンデルスゾーンのモテットは、演奏会にも取り上げられることも比較的多く、録音も充実しています。ルネサンス・バロック期の純粋なポリフォニー音楽とは違って、メンデルスゾーンの作品を演奏するにあたってはユニゾンの力強さや、微妙な和声の襞を表出する技術が必要になってきます。とはいえ、バッハを尊敬していたメンデルスゾーンの筆致には、どこかしら古楽の書法が色濃く投影されているような気がします。そう考えてみると、古い時代のポリフォニー音楽を得意とする合唱団が多く彼の作品に取り組み、成果をあげていることにもうなずけます。当団がメンデルスゾーンを取り上げるのは、1996年の第5回定期演奏会に続いて2回目。私たちも今まで培った力を存分に発揮したいと燃えております。オルガン伴奏には、今回もお馴染みの能登伊津子さんをお招きしました。能登さんには、演奏されることが稀なメンデルスゾーンのオルガン曲を演奏していただきます。

ところで今回のステージではバード、メンデルスゾーンともにパートごとのソリストが大勢必要となるため、団員のほとんどがソリストを務めることになります。こうしたチャレンジが功を奏すか否か不安も多いのですが、それ以上に自分たちだけで何が表現できるか、という期待もふくらんできます。私たちの挑戦を皆様にも楽しんでいただければ、これに勝る喜びはありません。

さて、何から何まで新たな挑戦に満ちた今回の演奏会、どうぞ最後までごゆっくりお聴きください。


2002年3月30日
合唱団スコラ・カントールム代表
野中 裕


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