主宰者(指揮者)ご挨拶


東京は異常とも思える暖冬の最中、年の瀬を迎えようとする実感が なかなか湧きません。しかし振り返ってみると時間は確実に過ぎ去って いきます。まだまだ先のことのように思えた《ヨハネ受難曲》の演奏会も 3ヶ月後に迫っています。現在はテキストの読み込みを中心に、バッハが 音に込めた意義を解明し、かつそれを現実に鳴り響く音として表現すること に意を払って練習を進めております。《ヨハネ受難曲》のように宗教的メッセ ージが明瞭な曲では、指揮者がどの程度明確な表現意志を持てるかと言う ことが、演奏の成否に直結してまいります。これはやり甲斐のある作業 ではありますが、非常にプレッシャーのかかる、困難な仕事であることも 確かです。テンポの設定ひとつをとっても、単なる直感に帰せられるような、 安直な発想は排除されねばなりません。そしてもうひとつ、そうした理念は 確実な技術をもってこそ表現される、ということを常に考える必要があります。 アマチュアの団体が時に陥りやすい罠は、自分たちが採算性を度外視できる 自由な立場にいることを、「何をやっても許される」と誤解してしまうことです。 特に技術的錬磨の不足した演奏は、どのように取り繕おうとも必ず馬脚を 現します。幸いにして当団は熱心な団員に支えられてはいますが、アマ チュアの持つ力の利点と限界とを冷徹に直視し、表現技術の維持と向上 には細心の注意を払わねばなりません。そう考えますと、今年もまた反省の 多い一年ではありました。しかしそうした反省から何かを学び取ろうとする 意志の力が働く限りは、私たちの活動の泉が枯渇することはない、と信じ ております。年の終わりに当たって、決意を新たにするゆえんです。では、 当ホームページをごゆっくりお楽しみください。  


1999年12月
スコラ・カントールム代表
野中  裕


このページのトップに戻る