主宰者(指揮者)ご挨拶


暑中お見舞い申し上げます。今年は伊豆諸島を中心に地震の 被害が出ております。毎年のことながら、夏に入りますと風水害 のニュースに心を痛めます。被災地の皆様に音楽が一時の心の 安らぎをもたらしますよう、祈らずにはいられません。ところでこの ご挨拶を書いておりますただいまの時刻は、2000年7月28日 午後6時45分です。言うまでもなく、本日はバッハの250回目の 命日に当たります。今、私の部屋のスピーカーからはFM放送の 「音楽の捧げもの」が聞こえてきています。午後2時から深夜0時 までのバッハ特集、というマラソン番組が流れているのです。この 他NHKの衛星放送やクラシカ・ジャパンでも長時間のバッハ特集 が組まれています。そして今日世界中で演奏されるバッハの作品 が一体何曲あるのか、見当もつきません。バッハ・イヤーのフィーバ ーぶりは、1991年のモーツァルト没後200年のそれに優るとも劣ら ないようです。私たちはバッハを専門に演奏する団体ではありません が、こうして大きな節目の日を迎えてみると、やはり胸の高鳴りを 覚えます。しかし、以前から申し上げているとおり、私たちは3月の 「ヨハネ受難曲」に続けてバッハを取り上げることはしませんでした。 これは意識的にあまのじゃくを決め込んだわけではなく、ごく自然に、 団員の中から「基本となるルネサンスのポリフォニー作品をしっかり 歌っていこう」という声があがったためです。フィーバーに流されず、 自分たちの足下をもう一度しっかり固めよう、ということなのですが、 新しい団員の中には「やはりルネサンスの作品は退屈だ」と感じる 者もいて、その調整はなかなか大変です。ある人間が「素晴らしい」 と感じるものも、別の人にとっては何の感興も呼び起こさないという ことはよくあることで、結局音楽の趣味とは"Matter of taste"なの だとも言えましょう。私はバッハも好きですし、ルネサンスの声楽作 品も愛しています。多くの人に支持されている作品と作曲家を尊敬し、 なるべく先入観を排してそれに取り組んでいく、今の私の心境は そんなところです。第10回定期演奏会の曲目、そして今秋の「栃木 [蔵の街]音楽祭」のプログラムも、すべて決定しました。今回の 選曲は、上に示した私の心境と団員の熱意が組み合った「ちょっと 地味だけれど、でも中身は濃いぞ」とでも形容すべきものです。どう ぞご期待ください。それでは、当ホームページをごゆっくりお楽しみ ください。

2000年7月28日
スコラ・カントールム代表
野中 裕


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