椋本浩子さんの訃報から1ヶ月がたちました。まだ信じられない、という
気持ちを残しながらも時間は確実に過ぎていき、ふだんの生活の慌ただ
しさの中に身を置いている自分に気がつきます。かくも時の流れとは残酷
なものか、と改めて痛感いたします。時が過ぎゆく、時代が変化する、とい
うことは誰にでも平等に課せられた運命ですが、今年は特にその感を強く
します。3月3日に、私の勤務先である東京都立秋川高等学校の、最後の
卒業式が挙行されました。36年前に、全寮制という特色を最大限に生かして
熊の子のようにたくましく、文武両道に秀でた「黒い秀才」を育てる、という目
標を抱いて設立された学校だったのですが、これも時代の流れには勝つことが
できませんでした。このことについて詳しく申し述べることは合唱団のホームペ
ージという性格上できませんが、ともかくも秋川高校はその役目を終えたわけ
です。最後の卒業式に参加した3年生はわずか44名でした。特に最後の1年
間は、教職員の総数の方が生徒数を上回るという状態でした。しかしそれだけに
生徒同士、あるいは生徒と教員の絆は深いものです。卒業式で寮長のSくんが
号泣しながら答辞を読み上げたとき、教員を含めて会場の半分はもらい泣きをし
ておりました。現代にも、こういう感動が存在するのだ、と改めて教えてもらった
気がします。
スコラ・カントールムも、時の流れに応じてその姿を大きく変えてきました。ここ
数年は25名前後の合唱団として機能していますが、そのことの是非や、技術的
レヴェルの維持・向上については、常に団員の中からも様々な改善意見が出され
ています。しかし上記の例ではありませんが、10年かけて培った性格や生み出
される感動の質はやはり健在だ、と感じるシーンも多くあります。2月になってから
急速に練習のピッチが上がってきました。その際、団員は曲の解釈について疑問
の点は放っておかず、必ずその意を指揮者に正し、納得のいかない場合は討論
を要求します。これはスコラ・カントールム設立以来の性格であり、私が常に追求
してきたところです。設立10年を迎えいろいろと困難が多くなってきた当団です
が、練習時にこういった「全員で造り上げる」という喜びを実感できる限り、新鮮
な気持ちで前進していけるのだと思います。まもなく定期演奏会です。練習の成
果をすべて発揮できるよう、あとわずかですが全力で走りたいと思います。どうぞ
皆様、3月24日には武蔵野市民文化会館に足をお運びください。心よりお持ち
申し上げております。