前回のご挨拶で「栃木での演奏はいつも快晴に恵まれる」と書いたのですが、実はスコラ・カントールムの演奏会は悪天候に見舞われることが多かったのです。今は亡き椋本浩子さんが渾身の力を込めてメンデルスゾーンを歌った1996年の演奏会は雪の日でしたし、特別演奏会は今まで3回の演奏会のうち2回が雨、バッハの「ヨハネ受難曲」は突風の吹きすさぶ日でした。ですから私は「雨男」とのありがたくないあだ名を頂戴していたのですが、どういうわけかこのところ4回連続して演奏会は晴天、どうやら私も雨男の汚名を返上できるのではないかと思っていました。1週間前の週間予報でも10月19日は晴れ、私はひそかにほくそ笑みながら過ごしておりました。
それが、18日になって突然天候が崩れました。19日、午前中は何とかもっていた天気もリハーサルが終了した直後の17時過ぎには雨へと変わり、開場直前には大粒の雨が叩き付けるように降ってきてしまいました。この時ほど、私は脱出し得たはずの自分の運命を呪ったことはありません。
ところが、熱心なお客様の列は途絶えることなく続きました。演奏会後の集計によれば、あのような悪天候にもかかわらずおいでくださった方はちょうど200名。受付となった教会入口がやや手狭な構造だったため、入場処理に手間取ってしまいご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。教会いっぱいとなるお客様をお迎えして、私たちも気合いが入りました。演奏の出来については、いつもどおりお聴きいただいた皆様のご判断に委ねるしかありません。しかし終演後の熱い拍手は、歌った私たちひとりひとりの満足感を与えてくださる、心のこもったものでありました。お足元の悪い中お越しいただき、耳を傾けてくださったおひとりおひとりに、感謝の気持ちで一杯です。
特別演奏会では、客演の皆様の演奏をたっぷりとお聴きいただくステージ構成をとっています。「普段できない選曲と企画」を実現する機会としてとらえているからなのですが、今回も、現在売り出し中の若い名手の皆さんの協力を得ることができました。皆さんリハーサルから熱心に参加され、遠慮なしに主体的に音楽づくりに参画してくださいました。客演のみのステージでは、イタリア・バロックの器楽曲を合計5曲も用意していただき、期待に違わぬ熱演となりました。この場を借りて、厚くお礼申し上げます。
今回は1週間おきに別プログラムで本番を掛ける、という強行スケジュールでした。それに加えて夏にはウィリアム・クリスティー氏の公開レッスンを受講するという機会にも恵まれ、団員にはまさしく嬉しい悲鳴となったわけです。この間の練習スケジュールも大変過密なものとなり、主宰者の私も忙しさにオーバーヒート気味で、練習の密度に濃淡があったことは否めません。その中で彼らはときには厳しく指揮者を叱咤激励し、ときには無理をし、ときには練習をサボり?つつ、この秋の演奏会シーズンをひとまず満足の行く結果にしてくれました。自分の合唱団のメンバーを誉めることはひょっとしたらルール違反なのかもしれませんが、客演の皆さんと同じ、いやそれ以上の讃辞を彼らに捧げることに、私はなんの躊躇も覚えません。
休む間もなく、この月末からは2003年3月21日の第12回定期演奏会に向けての練習が始まります。今後とも精進を重ねてまいりますので、皆様次回も是非私たちの演奏会に足をお運びください。それでは、当ホームページをごゆっくりご覧ください。