主宰者(指揮者)ご挨拶


明日は師走、毎度同じことを繰り返すようですが時の流れの速さには驚くばかりです。無我夢中で走っているうちに、今年も暮れていってしまいます。私は今年36歳の年男、身辺には様々な変化があり、めまぐるしくも楽しい1年でした。

時の経過を痛感するのは、これと意識しての時ではなく、ふとした瞬間の何気ないことがらがきっかけとなることも多くあります。昨日(11月29日)、私は大学時代に所属していた「早稲田大学・日本女子大学室内合唱団」の定期演奏会に出かけました。いつもは早稲田から神田川を渡り、関口芭蕉庵横の急な坂を上って、会場となる東京カテドラル聖マリア大聖堂に向かうのですが、昨日は久々に目白駅から目白通りを東に向かって、散歩がてら歩いてみました。いくつもの風景が変わっていましたが、いちばんびっくりしたのは、学生時代によく出入りした日本女子大学(合唱団の部室があったためです。誤解なさらないよう!)には高層の新しい校舎が建設され、「女子大の顔」ともいえる成瀬記念講堂を圧するようにして聳え立っていたことです。その向かい側にある田中角栄邸には常時警察官が数名立って警戒に当たっていましたが、もうそんな姿も見かけなくなりました。自分が見慣れた景色がなくなっている、ふとそれに気づいたときほど時の流れを身にしみて感じるのは私だけではないでしょう。通い慣れた部室はどうなってしまったのか、学生食堂は今でも女子大生用の控えめな量の定食を出しているのか、男ひとりではなかなか入りづらかった軽食「ウィミン」は今でもあるのだろうか、とついつい中に入って確認したくなってしまったのですが、あらぬ疑いをかけられてもいけないので、ぐっと我慢を致しました。

しかし、カテドラルはいくつかの内装・外装の変化を除けば、いつもと同じ顔で私を迎えてくれました。いや、そんな気がするのは私の勝手な思いこみで、毎年2回通っているためにその変化に疎くなっているだけのことでしょう。でも、ここにくればいつでも、私の心は14年前、初めて公開の場で指揮をしたあの初夏の日と、パレストリーナのミサ曲を振った冬の日に帰っていきます。当時に比べれば、室内合唱団は運営的にも洗練され、多くのお客様を集めるようになりました。常任指揮者は若い青木さんに変わり、共演する器楽陣も大幅に若返りました。でも、後輩諸君の歌声の特徴は14年前と全く変わらないし、会場でお見かけした前常任指揮者の鈴木仁先生も相変わらずお元気で溌剌としていらっしゃったのが、今年はひときわ嬉しく心にしみました。

そして何より嬉しかったのは、現役団員の見事な頑張りです。今年6月、若々しい歌声は魅力たくさんであったものの、技術的に克服する点が多数見受けられたのに比べれば、その成長の度合いは一目瞭然でした。私がテノールであるから身びいきすると思われては困るのですが、特にテノールが「和声をはめ込んでいく」という感覚を身につけ、要所要所の和音を自らリードしながらかっちりと鳴らしたのには、心底驚いてしまいました。青木氏の適切な指導によるところが大きかったのだろうと推測しますが、それにしても若い力の伸び具合の著しさには舌を巻きました。これから一層の努力を期待するとともに、私たちも寄る年波に負けずに(?)頑張っていこうと思います。

私たちは12月21日の練習をもってこの1年の活動を終わり、また年明けから3月の第12回定期演奏会に向けて練習を重ねていきます。すでに定期演奏会のご案内も刷り上がりました。気が早いようですが、3月21日の定期演奏会には、ぜひ皆様お誘い合わせの上おいでください。それでは、当ホームページをごゆっくりお楽しみください。


2002年11月30日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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