主宰者(指揮者)ご挨拶


周囲はクリスマスの準備に大忙しといった感じですが、今年は寒波と暖冬のあわただしい交替の中で迎えることになりそうです。気温の変化に加えて風邪の菌も巷間を飛び交っているようで、体調を崩す団員が多いこの頃です。私事ですが、今年は二回も風邪を引き、高熱とのどの痛みに苦しみました。しばらく安静にしていれば何となく治るのですが、いつまでも完治せず、ぐずぐずと引きずるのが今年の特徴のようです。おまけに完治したと思うと、他の人が同じような症状を訴える。つまり、治り際に人にうつすことによってしか、完全によくはならないようなのです。たちが悪いと言えばこれほどたちが悪い風邪もないでしょう。自分がうつしたとしか考えられない人が隣で咳と鼻水に苦しんでいる、というのでは、治ってもあまり気持ちのよいものではなく、困ったものです。

そんな中で、私たちは12月21日に今年最後の練習を行いました。最後の練習の後には忘年会を行うのが恒例となっていますが、毎年欠かさず今年で13回目、さすがに長く続けてきたものだ、と思います。時間の流れの中で団員ひとりひとりの生活も変わってきています。特に最近思うのは、音楽活動上、スコラ・カントールム以外の場で活躍する団員が増えていることです。東京藝術大学を卒業してプロとしての活動を行っている大貫浩史をはじめとして、合唱のみならず、ポピュラー曲のア・カペラグループで活躍する者、編曲や作曲を手がける者、自分の主催する合唱団の運営と指揮に精一杯頑張っている者、楽器を携えてあちらこちらの演奏会場で演奏する者、とまことにヴァラエティーに富む顔ぶれが揃っていることに気がつきます。21日も他の合唱団の本番や練習に参加した者が結構いて、風邪にやられてしまった団員、修士論文の執筆に追われる若い団員などとあわせ、全員が揃っての練習というわけにはまいりませんでした。

しかし、私は基本的にこうした傾向を大変によいことだと捉えています。もちろん、オケあわせなどの重要な練習を休んだり、単にサボっているだけ、という態度は許されるものではありません。でも団員がそれぞれの人生で、それぞれの仕方で音楽を楽しむこと、そしてそこで吸収した経験と知識を、当団の練習と演奏に還元してくれることは、非常に重要なことだと考えています。世の中には大変に厳しいアマチュア合唱団も存在しているようで、練習日に重なった場合には演奏会に足を運ぶことすら許されないような雰囲気のところもあるといいます。私は、どうもそれに積極的に賛成できません。合唱団は、特にアマチュアの場合、団員の個性が生き生きと反映する体制を作り、維持すべきだというのが私の持論です。指導者への服従と規律の遵守とは、必要な場合には決然と行われねばなりませんが、伝家の宝刀は抜くときが大事です。

今年最後の練習は18人のメンバーが出席しました。忘年会は練習だけで帰った者と忘年会から参加した者、差し引きでこれもやはり18名のメンバーが出席し、和やかに今年を締めくくることができました。私としては、これはもちろん満足すべき今年の総決算です。夏のウィリアム・クリスティー氏公開マスタークラスへの参加、栃木[蔵の街]音楽祭と、2つの主催演奏会を好評のうちに終えることができたこと、私たちにとって特別に思い出深い1年となりました。私は、メンバーにも、ご支援くださる方々にも恵まれた、幸せな人間だと実感いたします。本当に、今年1年間ありがとうございました。この巻頭のご挨拶は、今年はこれで最後です。どうぞ皆様、よいクリスマスと新年をお迎えください。そして、14年目を迎えるスコラ・カントールムに倍旧のご声援をお願い申し上げます。


2002年12月22日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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