主宰者(指揮者)ご挨拶


私たちの1年間の活動の総決算である第11回定期演奏会は、おかげさまで無事に終了することができました。当団の定期演奏会は例年雨や雪にたたられることが多く、私は団員から「雨男」というありがたくないあだ名を頂戴しておりました。今年も前日は時ならぬ豪雨、また悪天候の中での演奏会になるのかもしれないと覚悟を決めたのですが、当日は朝から快晴、気温も上がって気持ちの良い風が吹き抜ける中で、199名のお客様をお迎えして歌うことができました。皆様の暖かいご声援に、心よりお礼申し上げます。

この演奏会のコンセプトは、当日お配りしたプログラムの「巻頭言」でお伝えしたとおりで、ホームページ上でもすでに「連載」のコーナーにアップしてあります。バードの「グレイト・サーヴィス」は、当団が演奏した無伴奏ポリフォニーの曲としては最も長大な曲です。これを歌い通すだけでも冒険なのですが、加えて何人ものソリストによるアンサンブルが要求されること、歌詞が英語であること(ほとんどの歌手や合唱団にとってそうでしょうが、ラテン語やドイツ語に比べて、英語は譜割り・発音などの面で非常に歌いづらいものです)、パートがいくつにも分かれるため、1パートの人数が最小で2人という極小編成とならざるを得ないこと、など多くの困難を抱えた曲です。「挑戦」が今回のキーワードだったわけですが、その結果については皆様の判断によるしかありません。アンケートの結果を見ると、概ねご好評をいただいているようでほっと胸をなで下ろしていますが、もちろん厳しいご意見も戴いております。演奏会後の打ち上げでは、以前このホームページを担当しておりました丹羽誠志郎から「英語の発音は落第点」と評価されましたし、「いくつかスリリングな部分があって、修正に必死だったのがわかってしまった」という意見もありました。また団員ひとりひとりが、本番で発揮できなかった点を反省している姿も多く見られました。持てる力は全て出し切った、という満足感はもちろんありますが、今回の挑戦は私たちにとって新たな課題を提出する機会にもなったようです。

ただ指揮者の私としては、こうした難曲に誠意を持って取り組んでくれた団員に心からの感謝を捧げます。特に緊張を強いたソロの担当者(今回出演した29名のうち22名にのぼります)は、その出来映えは客観的評価によらねばならないとは思いますが、「責任を持って歌う」という点では飛躍的な成長を見せてくれました。在団十年以上にのぼるベテランと、今後のスコラ・カントールムを担う若手が拮抗してソロを歌い継ぐ姿は、この先必ず活きてくる、いや活かさなければならない、と強く感じました。

演奏会終了後、事務室で最後の精算をしていた私に、内線電話がかかってきました。それは音響室からで、電話口の声は以前武蔵野市民文化会館で舞台監督をしていたTさんでした。彼は第6回と第7回の演奏会を担当してくださったのですが、その時彼は、「余計なことなのですが・・・」としきりに恐縮しながら、「この合唱団は、団としての声は完成している。しかし音が揃わない。これは個人的問題に帰することであって、歌手ひとりひとりが自分の出している音、相手の出している音を完全に最後まで聴いていないからだ。今後は団員各自がプロの歌手と同じような高い意識を持って自分の声、そして人の声と対峙していくといった姿勢が求められるだろう」という趣旨のことをおっしゃいました。 ただ仕事をこなすだけ、という態度とかけ離れた真剣な助言は、私の心に深く刻み込まれていました。その後武蔵野市民文化会館を離れたと伺っていましたので、突然の電話に私は少なからず驚きました。電話の向こうでTさんは、「今日は仕事があってこの会場に来ました。音響室で皆さんの声を久々に聴いて、以前指摘した問題点がすべてクリアーされているのに驚き、感激しました。どうしてもそのことをお伝えしたかったのです」と、やや興奮した口調で話されました。5年以上も前に担当したアマチュアの一合唱団を憶えていて、その成長をこんなにも喜んでくださるとは、私はTさんのお人柄をこよなく尊敬するとともに、非力な私たちが音楽を続けていく意義を再確認したような気がして、目頭が熱くなりました。

今回の演奏会は、残された課題も、得られた感動も大きいものとなりました。私たちはしばらく結果の反省と充電を行い、5月11日からまた活動を再開します。今後もスコラ・カントールムに変わらぬご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。


2002年3月31日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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