主宰者(指揮者)ご挨拶


気がつけば、すでに秋の風が涼しく通り過ぎていきます。金木犀の香りが街道を彩り、すっかり夏は終わったとの感触を強くしますが、皆様風邪などひいていらっしゃいませんでしょうか。季節の変わり目、どうぞお気をつけてお過ごしください。

私の勤務先では、つい先日文化祭が終了いたしました。今年はどの高校でもこうした行事を中学生募集の格好の機会と位置づけ、活発な勧誘?活動を展開したようです。私たちの高校も決して派手ではありませんが、中学生向けの説明コーナーを設けて説明に務めました。都立高校のこうした様子はテレビのニュースでも放映されましたのでご存じの方も多いでしょうが、学校の側が生徒から厳しい選択の目で見られてしまう時代、企業努力は学校にも課せられていると考えねばなりません(これは様々な問題をはらんでいると個人的には思うのですが、ここで述べるべき事柄ではないでしょう)。時代の流れの激しさを身にしみて感じます。

大学の合唱団でも事情は同じなのではないでしょうか。私たちの世代が卒業する頃から、すでに大学合唱団の入団者数減少とレベル維持の困難さは顕著になっていました。高度経済成長期、大学合唱団、中でも男声合唱のレベルは最高潮に達したと言われており、その中から日本を代表するヴォーカル・アンサンブルがいくつも誕生しましたが、今となっては昔語りの感を免れません。少子化の弊害のわかりやすい一端だと言ってしまえばそれまでですが、これからは団を維持していくことそのものが難しいグループも多くなるでしょう。後輩達の健闘を祈るばかりです。

私たちのような社会人合唱団はなおさら、歌う側の冷徹な選択眼にさらされるのは言うまでもないことです。安くはない団費やチケット負担という出費を伴い、貴重な休みを犠牲にして歌いに来るのですから、自分に最も適した合唱団を探そうという心理が強く働くのは当然のことです。もちろん、「自分の好きな曲が歌いたいから、その都度合唱団を移り変わっていく」という人もいるでしょうが、そうした人でもホームグラウンドとなる団をひとつは持っているのが普通です。そうした様々な欲求を持つ歌い手たちをどう勧誘し、定着させ、まとめ、どのように練習して演奏会に持っていくか。ここが運営者・指揮者の腕の見せ所でもあり、艱難辛苦の茨の道でもあるわけです。要求されるのはごく単純なことで、練習内容と演奏会などの活動内容が充実していれば、団員同士の人間関係でよほどの軋轢でもない限り、歌う側は必ず一定の満足を示します。しかし、これは言うに安く行うに難きことの典型例です。これ以上申し上げるのは愚痴めきますのでやめておきますが、最近馬齢のみ重ねて経験に頼りがちな私としては、「東響コーラス」という他の合唱団で歌うことの貴重さ、新鮮さを痛切に感じています。またどんなに耳の痛い意見であろうとも指揮者にしっかりとアピールする団員たちの存在が、本当にありがたいものです。

いよいよ10月の演奏会シーズンまであとわずかとなりました。10月19日の「奉仕園100円コンサート」は、おかげさまで順調にチケットが出ており、団員一同感謝しております。しかし売り切れまでにはまだ余裕がございます。素晴らしい客演の皆様の演奏を含め、是非とも聴いていただきたい内容です。チケットの予約を心よりお待ちしております。また12日の「栃木[蔵の街]音楽祭」へのおいでもお待ち申し上げます。それでは当ホームページをごゆっくりお楽しみください。


2002年9月25日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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