4月も半ばを過ぎ、今日などは汗ばむほどの陽気が続いています。あっという間に第12回定期演奏会から1ヶ月近くが経ちました。私たちは約3週間の充電期間を経て、4月13日から2003年度の活動を開始しました。14年目に突入したわけで、手探りのまま出発した設立当時のことを考えると感慨深いものがあります。
私は昨晩、つまり聖金曜日の夜ですが、初台の東京オペラシティーで行われたバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の「マタイ受難曲」公演を聴いてまいりました。鈴木雅明氏率いるBCJは、私たちと同じ1990年の設立です。昔話をして恐縮ですが、私が大学生の頃に入れていただいた「コレギウム・ヴォカーレ・東京」という合唱団は、古楽を専門に取り扱う合唱団の草分けとも言える存在でした。鈴木雅明氏の弟でチェロ奏者の秀美氏、そしてその他現在の日本古楽界を背負って立っている方々は当然ながら皆若く、ちょうど海外留学を終えて帰国した頃だったのです。「コレギウム・ヴォカーレ・東京」で、そうした若き日の彼らの演奏にご一緒する機会があったのは、今から考えると大変な幸せだったと思います。
いつの間にか私は自分でも合唱団を持つようになりました。現在BCJその他で大活躍している方々のサポートを得ることができるのは、もちろんその後に出会った多くの方々のおかげです。しかし私の若い日々の経験が、その後のスコラ・カントールムの在り方に有形無形の影響を及ぼしていることも事実です。スコラ・カントールムは原則として、客演には日本を代表する若手の古楽演奏者をお招きすることにし、アマチュアとの共演は行っていません。自分たちがほぼアマチュアばかりの集合体であることを考えれば、これは実に思い上がった方針だと思われるかもしれません。しかしそれには、「優れた客演との共演を通して、自分たちの成長を期したい」という強い思いが根底にあります。実は私自身アマチュア団体との共演を数多く行い、非常に楽しい体験をしてきました。しかし、スコラ・カントールムは「アマチュアの自主運営でどこまでハイ・レベルな音楽が出来るかの挑戦」をする場所である、という意識があります。これは私だけでなく、団員全員がそうです。それゆえに、当団は(自分たちから見れば)鮮度を落とさずにここまでやって来られたのだと思います。それを考えると、私がこうした一線で活躍する皆様と若い頃から一緒に音楽を作る機会があった、という経験は何ものにも代えられません。
もう一つ、私たちは若く伸び盛りの将来のソリストを積極的に起用しています。これはプロのアンサンブルの方々の意向にも添うことです。これからを担う若手を育てるには、アマチュアへの客演は「経験を積み、聴衆の評価を直に受ける」という点で貴重な場です。アマチュアの熱意、ベテランの熟練の技、若手の新鮮さ。これらの魅力が集結した、私たちにしかできないステージ作りをしようと考えています。
第12回定期演奏会の録音が届き、早速聴いてみました。細かな問題点を多く抱えていますが、演奏会の一回性という点から見れば、これほど熱気を帯び、また納得のいった演奏は今までそうそうなかったといえます(もちろん、これは聴いていただいた皆様の客観的なご意見を謙虚に伺って修正しなければならないことです)。しかし昨晩のBCJの演奏は、熱気の上に立つ確かな技術、3時間以上にわたる大曲を全体から見た俯瞰力の素晴らしさ、そして細部の彫琢の見事さで私を圧倒しました。私が演奏活動を始めた15年ほど前、誰が日本にこのような高度な専門団体が登場すると予想したでしょう。身近にこれほど大きなお手本が存在すること、そしてそのメンバーと共演できることは、私たちにとってプレッシャーではなく、大きな喜びです。私たちは私たちの存在意義を掲げ、こつこつと地道な活動を続けたいと思います。新年度も、どうぞスコラ・カントールムにご指導とご支援をお願いいたします。それでは、当ホームページをごゆっくりお楽しみください。