5月最終日の今日、やっとご挨拶の更新ができました。前回の更新から1ヶ月半、随分と間が空いてしまいました。お詫び申し上げます。今年度は本業の方で高校1年生の担任となり、毎日を忙しくも楽しく過ごしております。担任は本当に久しぶりですので、余計に楽しいのかもしれません。しかしあまりに最初飛ばしすぎると後で反動が来るのが世の常、いつも冷静さを失わずに仕事に励みたいと思います。
今年度のスコラ・カントールムの活動がほぼ決まりました。特別演奏会などを行わず、10月の「栃木[蔵の街]音楽祭」への参加と、2004年3月14日(日)の第13回定期演奏会の二本立て、というオーソドックスなパターンに戻ります。「栃木」の詳細はまだ未定ですが、10月11日・12日・13日の開催期間中のどこかで、いつものように「メインステージ」に出演させていただきたいと考えています。その他変更がある場合には、随時このホームページでお知らせ致します。
今年度の特徴は、1998年度以来5年ぶりに「オール・ア・カペラ・プログラム」を組んだことです。2001年度はバードの「グレイト・サーヴィス」とメンデルスゾーンのモテットで、1曲にしか伴奏が入らなかったことを考えればこれもほぼオール・ア・カ・ペラではありましたが、今回は私たちのレパートリーの中心である、ルネサンスのポリフォニー曲が主となります。演奏曲の詳細については、コンサートのお知らせのコーナーをご覧ください。大曲「教皇マルチェルスのミサ曲」はSATTBBというかなり変則的な編成で書かれており、名前だけは有名な割に実際の演奏があまり行われてこなかった曲です。今回私たちがこの曲を取り上げた理由の一つは、現在のスコラ・カントールムが(世間では珍しいことらしいですが)テノール・バスという男声パートの方が人数が多く、この曲の編成に合っていることです。それに加えて、前回の定期演奏会でビクトリアの「レクイエム」をともかくも歌いきったことで、後期フランドル楽派や、バロックに直接つながるイタリアの作曲家たちのポリフォニーをもっと追求しようという気運が高まったこともあげられます。現在、満を持した、私たちなりの「教皇マルチェルスのミサ」の生演奏を皆様にお届けしよう、という意欲をもって練習に励んでいます。
ステージはあと二つ。ひとつはマドリガリズムの顕著な後期ルネサンスの宗教曲を特集しますが、もう一つのステージは一挙に400年も時代を下り、十二音音楽の創始者、シェーンベルクをとりあげます。これには、おそらく大変驚かれた方が多いのではないかと推察します。このステージを組むに当たっては相当の覚悟が必要でした。いかに線的対位法の継承者といえども、教会旋法の枠内にとどまるルネサンスの宗教曲や調性に支えられたバロック時代の合唱曲とは異なる世界です。特に作品50Aの「千の三倍の年」は、十二音技法を用いて書かれた、たった25小節の曲です。使用する技法と詩の内容がここまで結びつき、神秘そのものを暗示する強烈な表出力を持った曲を、私は他に知りません。しかしそれは同時に、歌いにくい音程が続出し、正確な和音を作ることが極めて困難であることをも意味します。団員の間に動揺が走ったのも無理のないことです。しかし、譜読みを進めていくうちにこの曲の魅力を少しずつ味わえるようになってきています。聴いてくださる皆様にもご満足いただけるように努力したいと思います。
シェーンベルクについては、まだまだ語り足りないことがあります。それは今後またこの「ご挨拶」などでお話ししていこうと思います。目標も決まり、新たなステップを踏み出すスコラ・カントールムに、皆様のご声援をお願い申し上げます。