主宰者(指揮者)ご挨拶


あけましておめでとうございます。昨年は世界的に大きな出来事、それも平和、というものの本質を根本から考え直さなければならないようなことが多くありました。それと同時に、私の身近にも激動、ともいうべき諸機構改革が相次ぎました。年頭からこのようなことを書いてしまって申し訳ないのですが、私たちアマチュア音楽家はもちろん、プロの音楽家にとっても、活動をする上でいろいろな障碍が生じる時代であることは事実のようです。

そうした中で、今後のスコラ・カントールムが歩むべき道はどのようなものであるか。これを真剣に考えなくてはならない時期に差し掛かっているような気がしてなりません。10人に満たない若い仲間が集まって、この先どうなるかもわからない、でも何かができるのではないかという思いを抱いて歌い始めたのが14年前の1月でした。その後当団をご支援くださる皆様のおかげで、私たちは今までアマチュアとしては贅沢な活動を行うことができ、また過分な評価をいただいてきました。しかし14年という月日は、決して短いものではありません。今私が勤務校で教えている高校1年生が15年前に生まれたのだ、という事実を考えてみてもそれは明らかです。団員たちも入れ替わり、創立当時を知るものは私の他には一人もいなくなりました。そのような中で、団員の生活形態も日々変わっていきます。様々な世代、様々な指向を持つ30人の所帯をどうまとめていくか……。もう一度、初心に戻って考え直すことが、今の私に求められていると痛切に思います。

さてでは何をどうするのか、ということになると、なかなか難しい問題です。初心に還るといっても、10人ほどで活動していた昔のレパートリーを中心に据えることは、もう団員数からして無理があります。また合唱団の機構を整備し、会計制度を確立し、活動の中で出てくる様々な仕事を団員に割り振りたい、という声が団員自身から提案されていますが、もっとも効率よく、団員が満足行く方法は何なのかは、まだまだこれから皆で模索していかなければなりません。

幸いにして、私には、素晴らしい団員とあたたかく見守ってくださる聴衆の皆様がいます。これはスコラ・カントールム15年の歴史のなかで最も貴重な財産です。人との出会いは、かけがえのないものです。そして、人との出会いを大事にしていく姿勢こそ、諸々の難題の解決の糸口になると信じています。人間は、形而上的な信念と掛け声だけで動くものではありません。日々の実践、合唱団でいえば、地道に練習し、曲について研究し、なるべく多くの方に演奏会の案内をアナウンスする、といった当たり前で目立たない行動こそが大事なのだと、いつも考えます。「人を大事にする」という一点が守られている限り、妥協は「理念の喪失」ではなく、創造的行為となり得ます。それを忘れないようにして、私は節目を迎えたスコラ・カントールムの運営に携わっていこうと思います。

一年の計は元旦にあり、と申しますが、2004年の活動については未だ具体的なことは決まっておりません。これからじっくり腰を据えて考えていきますが、「人を大事にする」という姿勢を崩さず、また音楽レヴェルの維持と向上を至上命題として、お聴きいただく皆様に満足のいく活動を行っていこう、と決意しております。どうぞ皆様、15年の節目を迎えるスコラ・カントールムへの倍旧のご支援をお願い致します。まずは3月14日、武蔵野市民文化会館でお目にかかれますように。

皆様にとって、本年が充実した年でありますようお祈り申し上げます。


2004年1月1日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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