第13回定期演奏会は、ご来場いただいた皆様の大きな拍手をもって無事に閉じられました。ここまで来る道のりは決して平坦なものではありませんでしたが、やはり終わってみると深い感慨が胸からこみ上げてくるのがわかります。お聴きいただいた皆様、舞台関係・録音担当の方々、そして団員一人一人に感謝を捧げたいと思います。
この演奏会には、難関がいくつもありました。まずは、頼るべき楽器がひとつもない、オール・ア・カ・ペラのプログラムだったことです。楽器伴奏付きでは驚くべき精度を発揮する一流のプロ合唱団が、ア・カペラとなったとたんに音程の破綻をきたして乱れていく、という現場を、私は何度か目撃したことがあります。だからこそ私は意図的に、よほど特別なプログラムでないかぎり、必ずルネサンスのポリフォニー音楽をア・カペラで演奏するステージを組み続けてきました。しかし、今回はすべてのステージで伴奏がない、自分たちだけですべてを律していかなければならないことになったわけですから、その緊張度は指揮者も団員も並大抵のものではありませんでした。30人近いメンバーでオール・ア・カ・ペラのプログラムを組むには、普段より一層の慎重さと練習内容の充実が求められます。
それに加えて、今回はシェーンベルクという大きな挑戦がありました。この挑戦の成果がどうであったかは、お聴きいただいた皆様に判断していただくよりありません。《三つの民謡》の素朴な味わいが、その雰囲気や息づかいまで含めて客席に届いたか、《千の三倍の年》の音程はしっかり保てていたのか、その神秘的な世界の一端でも示すことができたか、など反省する点はいくらでも出てくるでしょう。録音が届き次第、聞き直して今後に生かしていこうと思います。嬉しかったのは、ご記入いただいたアンケートの集計結果によりますと、《千の三倍の年》の評判が群を抜いて高かったということです。この曲は団員にも大きな忍耐を強いるばかりでなく、本番ではほんのちょっとした気の緩みが大事故につながるという恐ろしい曲だったわけで、ともかくもお聴きいただいた方々に喜んでいただけたということが、私にとって大きな財産となりました。
1人1パートではなく、合唱で微妙なマドリガリズムの綾を表現すること、パレストリーナのひたすら清澄で美しい天上の世界を的確に描き出すことなど、今回は私自身相当勉強しなければならないこと、悪戦苦闘したことが多くありました。また活動の規模が大きくなるにつれて、合唱団の運営や機構自体にもいろいろと気を遣わなければいけないことが出てまいります。今回の演奏会を迎えるまでに、私は疲労困憊していたというのが正直なところです。しかし日曜の夕方という時間帯にもかかわらず200名をはるかに上回るお客様にお出でいただき、大きな拍手をいただいたことは、はっきりと私の自信となりました。今後はしばらく休養し、また新たな気持ちで皆様にご満足いただける演奏会を目指して邁進しようと思います。どうぞ皆様、今後ともスコラ・カントールムに倍旧のご支援とご指導をお願い致します。