主宰者(指揮者)ご挨拶


皆様あけましておめでとうございます。昨年は、個人的には病に襲われるなど難儀なことの多くあった年でしたが、世界的にも様々な事件や事故、自然の災害がありました。新しい年が明るい希望に満ちた年であるように、と祈る気持ちはここ数年で一番強いものがあります。私たちの歌声が何に寄与できるのかは全くわかりませんが、演奏会に足をお運びいただく皆様に少しでも幸せな気分になっていただけるよう、練習に励みたいと思っております。

私が合唱団の運営に復帰してから3ヶ月が経ちました。僅かな期間で定期演奏会の選曲と練習を行わざるを得ませんでしたが、団員たちの頑張りで練習は順調に進んでおります。毎回、「自分の合唱団のホームページで自分の指揮するメンバーを誉めるのはルール違反なのだろうか?」と自問しつつも、やはり私は団員に支えられているのだという思いを止めることができません。今回はドイツ・バロックの知られざる名曲を集めたプログラムとなりましたが、団員はこの手の音楽にはかなり慣れているようです。練習一回目から、ある程度ツボをつかんだ音が鳴り出したのは経験のもたらすところでしょう。しかし、狎れに陥らないよう常に自戒しなければなりません。また、ドイツ語だけのプログラムとなったので、ドイツ語の修練を十分に積んでおくことが必要です。当団には、大学でドイツ語を専門に学んだ者や現役の音楽学者が在籍しておりますから、比較的恵まれた環境にあると言えましょう。でもネイティヴスピーカーはおりませんので、正しいイメージを持つためにはあらゆる手段を用いてドイツ語の音声に触れ続けておく必要があります。

ドイツ語を母国語として持たない者が、ドイツ語で書かれた、しかも今から300年前に作られた音楽を演奏するということは、常に畏怖の念を伴います。プロの歌手でさえ何年も修行を要求される外国語の勉強は、社会人を中心とする私たちには大きな障碍となります。しかし、日本人であれば誰もが日本語の曲を上手く歌えるということはあり得ません。母国語であるか否かを音楽表現の主要要素として捉えるという考え方もありましょうが、私はその考えには与していません。ドイツ人には、ドイツ人なりに、ドイツ語を歌う苦労が存在するでしょう。それと表裏の関係で言えば、「日本人のアマチュアが果敢にチャレンジしても、絶対に成果が得られない」ということはないと思います。でもそれは、「団員全員がドイツ語を縦横に理解し話し、ドイツ語で思考できなければならない」などという現実離れした理想を追うことであってはならないのではないでしょうか。理想は理想としても、現場では、実際に努力できる範囲での目に見える達成が不可欠なのです。

2002年の夏に私たちを指導していただいた、レザール・フロリサンの指揮者ウィリアム・クリスティーさんも、練習の際は語学を専門とする者をアドヴァイザーとして呼ぶのだそうです。素晴らしい成果を挙げているプロの仕事の徹底性とは、そういうものだと思います。私たちが限られた時間と条件の中で、いかほどの進歩を見せられるのか。非常に怖いことでありながら、音楽への憧れが、そうした無謀ともいえる挑戦へと駆り立てるのでしょう。2月12日には、敢えてその恐ろしい作業の結果をお聴かせすることになります。厳しいですが、それだけに歌い甲斐もあるのです。どうか一人でも多くの皆様にお聴きいただき、率直なご批評を賜りたいと思います。そしてそれだけでなく、必ず「来て良かった、聴いて良かった」と思っていただきたい。これが、年頭にあたっての私の決意であります。


2005年1月1日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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