当団の第5回特別演奏会が終了いたしました。当日は雨にもかかわらず、161名もの熱心な聴衆の皆様にお出でいただき、感謝の言葉もございません。会場となりました同仁キリスト教会は小さく、アットホームな雰囲気が魅力的ですが、今回は皆様に少々窮屈な思いをさせてしまったことをお詫び申し上げます。しかし、これほど多くの皆様が私達の演奏に興味を示してくださったことに、ありがたさを感じるとともに、驚きもしております。
この演奏会は、演奏会の冒頭でも改めてご説明しましたとおり、アンサンブル・カペラを中心とする諸団体が参加した「オブレヒト・フェスティヴァル:ミサ曲連続演奏会」の最終回という形で行われました。今までも再三書いてきたことですが、オブレヒトの評価、知名度は、残念ながら決して高いものではありません。ルネサンスを代表するフランドル出身の作曲家、ジョスカン・デ・プレの後塵を拝していたというのが事実です。言い方は悪いですが、オブレヒトは極めてマイナーな作曲家の一人と言えるでしょう。彼の作品を取り上げるにあたって、どれだけのお客様に来ていただけるのか、かなり不安であったというのが偽らざる心境でした。
ところが夏の終わり頃から、このホームページのお申し込みフォームを介して、また直接お電話で、とかなりの件数のお問い合わせをいただくようになり、チケットが1枚、また1枚と売れていきました。そのペースは、日本におけるメジャーな作曲家の代表格、バッハを演奏したときに匹敵します。大変に嬉しく思いながらも、「どうしてこんなにチケットがさばけるのだろう?」と考えてしまったのです。東京には、潜在的な「オブレヒト・マニア」がたくさんいたのだろうか。あるいは一般の古楽ファンが、こうした珍しい企画を知って興味を持たれたのか。もしくは、「常連」の皆様があたたかい眼差しをもって見守ってくださったのか・・・。そういえば10月2日には、NHK教育テレビの「芸術劇場」で、ほんのわずかな時間ながらも「オブレヒト没後500年」を特集した番組も放映されたのでした。いろいろな要素が積み重なってのことだとは思いますが、まさか150名を超える入場者数になるとは思い及びませんでした。
しかし絶対に落とせない要素として、「日本でオブレヒトの連続演奏会を行う」という、大胆な発想をなさった企画者の卓抜さにあると思います。私たちの演奏会が行われるまでに、カペラを初めとする諸団体が演奏を積み重ねてきました。「目白バ・ロック音楽祭」の試みも注目を浴びました。その過程で、「オブレヒトは素晴らしい!また次も聴いてみよう。」という認識が徐々に深まってきたのではないでしょうか。今回の演奏会は、諸団体の皆様が蒔いてくださった種の結実を、私たちが刈り入れたということができましょう。お追従を述べていると思われては困るのですが、本当に、こうした一期一会とも言える連続演奏会を発案・企画なさった花井哲郎様・斉藤基史様には、その先見の明に感服せざるを得ません。また事務面でお世話になりました大塚真弓様、その他ご協力くださった皆様に、心からの感謝を捧げます。
肝心の演奏の方ですが、これは皆様の評価にまつより他ありません。しかし私たちには、全力を出しきった、やるだけのことはやった、今これ以上の演奏は私たちには望めない、という達成感があります。難曲揃いのオール・ア・カペラ・プログラムだったこともその一因ですが、練習において団員ひとりひとりが真剣にこの曲と向き合ったという実感があるからです。パート分けや歌い方のテクニックについては相当議論も交わされました。音色、発音、音程の正確さ、と私自身もかなり神経質ではありましたが、それ以上に、指揮者の見逃した細かいチェックを、団員が自主的に入れてくれました。そして何より、アマチュアにとって重大な、メカニカルな部分での難しさを、練習によってよく克服してくれました。いつも同じことを申して恐縮ですが、自分の合唱団の団員を褒めることが適切かどうかは別として、これが現在の偽らざる実感であります。演奏につきましては、今後録音を聴くなどして、謙虚に反省して参ります。
さて次回の演奏会は先ほど「メジャー」と申し上げたバッハ、しかもその中でもかなり有名な「マニフィカト」を含むステージとなります。今回とは全く性格の異なる演奏会となるでしょうが、取り組む姿勢に変わりはありません。どうぞ次回もご期待ください。第5回特別演奏会の無事終了を皆様に感謝申し上げて、ご挨拶と致します。