年の瀬を迎えようとしております。私は2004年に健康上の不安を抱え、半年間の休暇をいただいたわけですが、今年は無事に一年を全うできそうです。これも、団員一同の頑張りもさることながら、皆様のご支援のたまものと感謝致します。本当にありがとうございました。
今年は、2月に行われた第14回定期演奏会と、10月の第5回特別演奏会のふたつが大きな活動の柱でした。ともに好評のうちに終えられたことで、正直なところほっと胸をなで下ろしています。2月の演奏会は、復帰後4ヶ月しか時間のない中で行わねばならず、選曲と練習計画にはずいぶんと気をつかったのを覚えています。結果として、コンサートマスターの桐山建志さんをはじめとする器楽陣の素晴らしいサポートによって、今までで最も充実した手応えを感じる演奏会のひとつになりました。また10月は「オブレヒト・フェスティバル」への参加という形で実現した特別演奏会でしたが、こちらは、「ミサ・カプト」という曲の難しさに音を上げそうになりながらも、その面白さ、斬新さに吸い込まれていくような、得難い経験を致しました。私たちはこのところ常時25〜30名程度で活動しており、その分ルネサンスの声部数が少ないモテトゥスを演奏することにやや困難を感じておりました。10月の演奏会は、様々な事情でステージに乗れない者も多く、久々に25名を切った人数で演奏会に臨みました。少人数での活動は、ルネサンスのポリフォニーの演奏にとっては好都合なものの、練習するには困難がつきまといます。それを乗り越えてひとつの形を残せたことが、私たちにとって貴重な財産となりました。
私たちの活動は、学校と同じく「年度」で動いています。これは私が教員をしていることとは全く無関係でありまして、第1回目の演奏会を、たまたま3月に開いたことに由来しております。来年3月の第15回定期演奏会に向けて、新たなスタートを切ったところです。今回はバッハの名曲「マニフィカト」を中心とする華やかなステージとなりますが、そのために団員も少し増強いたしました。新入団員を含めて、当団のメンバーに感謝することは、その音域の広さです。もちろん一人の人間が多くの音域をカヴァーできればそれに越したことはないのかもしれませんし、事実そうした広い声域を持つ者もおります。しかしメンバーが集まったときに、各自が得意な音域を持ち、合唱団の総体としての音域が広いこともまた大事なことだと考えます。ソプラノ、バスの両外声が安定して豊かな響きを持つことと同時に、アルト・テノールという内声が埋没せず、堂々とした自己主張を果たすことが必要です。この点、私は団員にただ感謝する以外ありません。あとは、その素材をどれだけ磨けるか、生かせるか、伸ばせるか、といった努力を、指揮者と団員が試行錯誤しながら行っていくわけです。
とりわけ今楽しみなのは、今回のメンバーが安定して来たときに、ルネサンスの難曲に取り組む下地が出来るということです。人数が多いと確かに響きは濁りますが、その分ダイナミックな表現が可能になります。何より、アルトに、テノールの音域もカヴァーできる者が多くなったことは、極めて音域の接近した(つまり、高すぎるテノールを持つ)ルネサンスの書法に理想的に対応できる見込みがつくわけです。まだまだ研鑽の余地を多分に残してはおりますが、今後の私たちの活動の幅を大きく広げてくれるのではないか、と思っております。
まずは、バッハの精緻なポリフォニーと和声、そして曲に込められた大いなるメッセージをどれだけ表現できるか、あと3ヶ月の挑戦が続きます。新しいメンバーを迎え、新しい音の世界を模索しつつ、新しい年に向かって前進致します。どうぞ今後ともご期待ください。