主宰者(指揮者)ご挨拶


第14回定期演奏会は、天候にも恵まれて無事に終了することができました。私個人としては、復帰後初めての演奏会となったこともあって、感慨もひとしおでしたが、とにかく疲れました。肝心の音楽的内容がどうであったかは、これから録音を聴くなどして反省しなければならない点も多々あろうと思います。しかし、多くの方々に支えられて、ともかくも現在の力を出し切ったという実感だけは確実なものとして胸のうちにあります。ご協力いただいたすべての皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

演奏会の手応えというのは、いろいろな場面で感じることができるものです。まず、何と言っても大きいのはお客様の拍手です。儀式の一環として手を叩いているのか、それとも本当に感動したから自然に拍手を送っているのかは、たいていの場合ストレートに舞台上に伝わってきます。今回は、いつもにも増してこの「拍手の熱さ」を感じ取ることができました。休憩前の第2ステージ終了後、いつもなら私はさっさと舞台袖に引っ込んでしまうのですが、今回はさすがに拍手を無視することができませんでした。第2ステージからこれだけ盛り上がった演奏会というのも珍しいのですが、それが「バッハ一族のモテット集」という非常にマイナーで地味なジャンルのステージだったということも私を驚かせました。もちろん、よい曲をよい演奏でお聴かせしたいという趣向で作ったステージですから、「当たった」と言えばそれまでです。しかし、おそらくはほとんどの方が初めて聴く曲に対して、惜しみない拍手を送ってくださっていることには、本当に感謝の念を抑えることができません。そして、素晴らしいオルガン独奏を披露してくださった今井さんをはじめ、器楽の名手たちに支えられた第3ステージの終了後、私の耳に飛び込んできたのは、さらに勢いを増した拍手の渦でした。人に誉められたいだけのために音楽をやっているわけではありませんが、やはりこの快感は一度知ってしまうといけません。今までの苦労がすべてよい思い出に変わるのは、この瞬間です。

それともうひとつ。演奏会のあとの打ち上げと称する宴会も団員の楽しみだ、ということを去年書いたと記憶しているのですが、予想もしなかったゲストがこの宴会にやってきて、口々にその日の感想を述べてくれるのも醍醐味なのです。今ひとつ力が出し切れなかった演奏会の後では飛び入りのゲストもやや遠慮気味、何より団員が盛り上がらないので、打ち上げというよりは反省会となります(それはそれで、必要かつ大変重要なことですけれども)。また今回は、翌日高知で仕事のある櫻井様がやむを得ず欠席なさった他は、すべての客演の皆様が打ち上げに参加してくださいました。お忙しいスケジュールを縫って演奏していただいた上に、打ち上げにまで付き合ってくださり、何と御礼を申し上げてよいかわかりません。さらに、皆様からいただくアンケートに書いてある励ましのお言葉や耳の痛い忠言も貴重です。今回のアンケート回収枚数は、後からメールで届いたものも含めると47通に達しました。全入場者数の約20%の方にご記入いただいた計算となります。こうした皆様からの反応が、団員にとって一番の喜びであることは申すまでもありません。そんなあれこれを考えますと、今回もやってよかった、手応えがある演奏会ができた、と素直に嬉しくなります。

次回は「オブレヒト・フェスティヴァル」への参加という形で、オール・ア・カ・ペラ、団員のみの力による演奏会となります。結成15年を迎えたスコラ・カントールムですが、温故知新というべき機会を与えられたことを僥倖と思います。今後も、真面目に努力して、真剣にその成果を世に問うていきたい、と気持ちを新たにしております。皆様の変わらぬご指導ご鞭撻を、今後ともよろしくお願い致します。


2005年2月20日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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