主宰者(指揮者)ご挨拶


前回更新から、約2ヶ月もの間があいてしまいました。深くお詫び申し上げます。

いつもこのような書き出しでご挨拶をせざるを得ないことを、本当に心苦しく思っています。私事で恐縮ですが、私は今年不惑の年を迎えます。浅学非才な私でも、やはり年相応の社会的な責任というものを背負う年代に入りました。なかなか、自分の思うように時間が使えない、というのが正直なところです。加齢とともに、音楽的にも成熟して行ければよいのですが、こればかりは自分の力だけではどうにもならぬ部分があり、言葉では言えないもどかしさを感じます。出来ることを、出来る範囲で、誠実に努力するしかありません。皆様からいただいているご支援にお応えすべく、これからも地道に、勉強と活動を続けて行こうと思います。

さて、本日は今年度のスコラ・カントールムの活動予定についてご報告を致します。近日中に詳細は別項にて発表しますが、まずはアウトラインのご紹介です。

メインとなる「第16回定期演奏会」は、2007年3月24日(土)に、いつもの武蔵野市民文化会館小ホールにて行われます。今回、当団としては初めて、フランス・バロックに挑戦致します。曲はアンドレ・カンプラの「レクイエム」です。リュリやシャルパンティエの「テ・デウム」と並んで、フランス・バロックの宗教曲のなかではかなり有名な作品で、それだけに本番にかけるのが怖い曲でもあります。しかし団員の中にはこの曲のファンも多く、私も「いつまで尻込みしていても仕方がない、今が潮時だろう」というような気合いが入りまして、取り上げることになりました。
この曲の書法は、大変単純です。ヴィオラが2部に分かれた弦楽合奏と、リコーダー2本、通奏低音というシンプルな楽器編成の上に、S/A/T/Br/Bという男声を厚くした合唱が、繊細で美しい和声を紡ぎ出します。ソリストはA/T/Brの3名が求められますが、ソリスティックな技巧を披露するのではありません。合唱と対話したり、一体化して、あくまでも曲に色合いの変化をつける役割に徹しています。この静謐で美しい、フランスの香りをどのようにして追求するか、一同勉強の連続となりそうです。
この曲の大きな決め所となるアルト・ソロは、音域から言っても、テノールやバリトンとの三重唱が多いことからみても、カウンターテノールで演奏するのが本筋でしょう。この重要なパートには、バッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーとして活躍し、現在バーゼルで研鑽を積まれている上杉清仁さんをお迎えすることになりました。また、通奏低音にはヴィオラ・ダ・ガンバの福沢宏、ヴィオローネの櫻井茂、オルガンの今井奈緒子、とおなじみの名手が揃いました。今回もこうした素晴らしい客演の方々に恵まれ、団員一同感謝の心を胸に練習に励んでおります。これ以外の客演につきましては、決定次第当ホームページで発表致します。
他のステージは2つです。ひとつは、イギリス・テューダー朝のモテトゥスを3曲お届けします。コーニッシュ、ホワイト、バードの作品です。いずれも演奏に10分から15分程度を要する大曲ばかりを選びました。特にコーニッシュの「めでたし、天の后」は「イートン・クワイヤブック」に含まれる作品で、最上声部(トレブル)の高音域での華麗な動きと、それを支える下の声部の複雑なリズムが魅力的な名作です。
もうひとつのステージは、ジェズアルドの「聖木曜日のためのレスポンソリウム」から冒頭の3曲をお聴きいただきます。ジェズアルドと言えば、彼のマドリガーレに見られるような、狂気的な和声連結や意外性に富んだ声部進行が有名ですが、宗教曲ではその色合いはだいぶ穏当なものとなっています。しかしそれでも、聞き手を(そして歌い手をも)びっくりさせる要素には事欠きません。どうぞご期待ください。

この他、9月3日(日)には、国立市の子育て支援イベントに出演させていただくことになりました。お集まりいただく子育て中の皆様やこれから父親・母親になる皆様、そしてもちろん子供たちにも、くつろげるひとときを提供できれば望外の幸せです。

本年度は、以上2本の本番を中心目標に据えて活動してまいります。今後とも、皆様のご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
不順な気候が続いております。どうぞご健康にはお気をつけてお過ごしください。


2006年6月18日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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