まだ気温の高い日が多く実感が湧かないでいたのですが、すでにすっかり秋も深まりました。たびたびの更新の遅れをお詫び致します。校務に追われる日々でしたが、その中で生徒の一所懸命な姿、新しい魅力に多く出会えたことは、確実に私の財産となりました。この職業を選んで良かったと思える瞬間が何度もあったのは、本当にありがたいことです。現在、世間を騒がせている教育問題も、現場でのこうした経験がひとつひとつ解決していくことなのでしょう。奮闘する若者たちの姿は、何者にも代えることのできない美しさを持っている、と私は思います。彼ら彼女らに負けないよう、私も教育に、そして音楽活動にも、手を抜かずに精進しなければと痛感します。
9月に「多摩らんなぁ」という出産・子育て支援のイベントに参加いたしました。いつもとは違うお客様を前にしての演奏でしたが、ホールの響きもなかなかで、気持ちよいひとときを過ごさせていただきました。あの会場にいた子どもたちが成人式を迎える頃、私は社会の一線から退くことになります。私がいつまで生きているのか、そしてこの合唱団がいつまで続くのかは予想もつかないことですが、音楽を愛し、文化を大切に出来る人間を育てるお手伝いができれば素晴らしいことです。それがどのような形でなら可能なのかは、いろいろと模索していかなければならないでしょう。まず私たちに課せられた使命は、ひとつひとつの演奏機会を大切に活かしていくことだろうと思います。
このところ、次世代に何を、どのように伝達していけばよいかを考えることがよくあります。ひとつには、私の年齢的なことも大きく関わっているでしょう。このホームページを更新できずにいる間に、私は満40歳の誕生日を迎えました。色々な場面で私が「生徒」の身分であり続けていることもあって、まるで当たり前のように、ある面で学生気分を引きずってきました。そして自分の人生は、何かしらまだ可塑性のあるものだ、という根拠のない感覚が支配していたのです。しかし冷静に考えてみれば、人生の折り返し地点は確実に過ぎています。そして若い人たちが向ける眼差しは、無言のうちに、私に対して、年齢に見合う成熟と自信、安定を求めていることに気づいて愕然とします。そうなのだ、最早自分は学ぶだけの人間ではないのだ、あらゆる面で。16年前、スコラ・カントールムは団員全員が同世代でありました。今は、多様な年代の団員を抱えながら主宰者の役目を全うしなければなりません。彼らの要求に対して「不惑」になった私が「不惑なりの」回答を示さなくてはならない。これはプレッシャー以外の何者でもないのですが、それを重圧と思わずに楽しんでしまうくらいの度量がなければならないのかもしれません。とにかく、今は5ヶ月後に迫った定期演奏会に向けて走っていくだけです。
2007年3月24日の第16回定期演奏会につきましては、その概要をすでに当ホームページ上で発表してあります。今回初めて挑戦するフランス・バロックの作品、アンドレ・カンプラの「レクイエム」の客演の皆様がすべて決定いたしました。詳しくは活動予定のページをお読みいただければ幸いです。今回も日本の古楽界を代表する重鎮ともいえる皆様をお迎えし、大変光栄であるとともに、責任の重さを痛感しております。またフレッシュな若手、初共演となる歌手の皆様など、楽しみの多い演奏会となりました。素晴らしい客演の皆様を生かすも殺すも私たち次第、何かと多忙な私ではありますが、誠実な練習に努めたいと思います。どうぞ皆様、ご期待ください。