主宰者(指揮者)ご挨拶


第16回定期演奏会まで、あと1ヶ月となりました。これから、私にとっては最大の難関であるリハーサルを経て、本番までの行脚が続きます。ここから先は団員の力を信じ、団員共々健康のほうに注意をしなければなりません。当日、皆様を元気にお迎えして、納得のいく演奏をお聴きいただけるよう、団員一同頑張っていきたいと思います。

さて今回の演目ですが、昨年のオール・バッハに比べれば、お世辞にも有名な存在ではありません。イングランドを代表する作曲家であるバードは別として、コーニッシュ、ホワイト、ジェズアルド、カンプラ。いずれもルネサンス・バロック好きを自認なさる方にはお馴染みの作曲家ですが、一般にはそれほど名の通った作曲家とは思いません(残念ながら)。ところが、演奏会まで1ヶ月というこの時点で、すでに前売りチケットがかなりの勢いで出ているのです。その枚数は、昨年のバッハにも劣りません。一昨年の「オブレヒト・ミサ曲連続演奏会」の時も、同仁キリスト教会にぎりぎりいっぱいのお客様をお迎えすることとなり、一同驚きの目を見張ったものです。日本、特に東京における古楽のあり方が、どうも確実に変わってきているような気がします。

例えば、復活した「北とぴあ国際音楽祭」では、毎年バロック・オペラの上演が続けられています。寺神戸亮さんが音楽監督を務め、極めて充実した成果を上げられているとのことです。また「ヘンデル・フェスティヴァル・ジャパン」が立ち上げられ、ヘンデルのオペラやオラトリオの上演が続きます。ルネサンスの宗教音楽を見事に歌う「ヴォーカルアンサンブル・カ・ペラ」の活動も見逃せません。さらに、目白の町を舞台にした「目白バ・ロック音楽祭」は、ユニークな企画と豊かな演奏者のラインナップで注目を集め、集客状況も好調、テレビや新聞など各種マス・メディアでもその活動が紹介されています。

私たちが活動を開始した1990年、日本で古楽を扱う演奏団体と言えば、渡辺順生先生指揮の「ザ・バロック・バンド」、有田正弘先生指揮の「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」くらいしかありませんでした。鈴木雅明先生の「バッハ・コレギウム・ジャパン」が誕生したのが奇しくも1990年、私たちと同い年です。それから15年以上が過ぎ、アマチュア先行の観があった日本の古楽演奏は大きく様変わりしました。かといってアマチュアの活動が下火になったのかというと、そうではありません。この間育った何人ものプロの音楽家が、いま熱心にアマチュアを指導してくれています。それによって、アマチュア団体のレベル・活動状況とも、私には確実に上昇しているように思えます。ただ、日本の経済状況が好転せず、労働時間の増加と賃金の据え置き、という事態が一向に改善されないため、どの団体も特に男性の確保が非常に厳しいという悩みは抱えていますが。

そんな中で、あくまでも「アマチュアの自主運営」にこだわってきた私たち「合唱団スコラ・カントールム」の活動は、どのように評価されうるのでしょうか。私にとってそれはもちろん気になるところではあるのですが、評価というのはお聴きになる皆様おひとりおひとりによって決められることですから、あまりに神経を使って萎縮するのも問題です。アマチュアである以上、団員たちが週に1回、楽しく歌える場であるという要素が優先されなければならない場面もあります。そのきわどいバランスをどうやって保っていくか、それは私にとって永遠の課題であり続けるでしょう。

いずれにしても、期待を持ってチケットを予約してくださる方がたくさんいらっしゃる、ということは、私たちに対する評価の、ひとつの嬉しい現れであることは事実です。団員一同、ご期待を裏切らないように最後まで精進に励みたいと思います。それでは皆様、3月24日に武蔵野市民文化会館でお会い致しましょう。


2007年2月25日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


このページのトップに戻る