主宰者(指揮者)ご挨拶


長い間更新を怠けている間に、季節は夏にさしかかりました。夏はバカンスのイメージがありますが、最近の私にとっては、地震や台風といった天災のイメージが色濃く映し出されています。子どもの頃のように、素直に夏が来たことを喜べない自分に気がついて愕然とすることもしばしばです。

スコラ・カントールムは、7月29日日曜日の練習をもって今年度前期の活動に一区切りを付け、夏休みに入ります。これは創設当時からの当団の習慣であり、この休みに効用があるのだ、という自説は折に触れて述べて参りました。しかし、今年は11月に「北とぴあ国際音楽祭」への参加公演という重大な責任のあるステージが待ち構えています。休みの間に感覚を鈍磨させないように、練習はなくとも搦め手から様々な手を打っていこうと考えています。

よい演奏をするには、練習以外のアプローチはありません。合唱をなさっている方なら、「自分では譜読みを終わらせたつもりなのに、どうしても同じ所で音がわからなくなる」「自分では正しい音を出しているつもりなのに、音程が悪いと言われる」などという経験をしたことがおありでしょう。人ひとりひとりの感性が異なれば、リズム、テンポ感、音程、音の明暗、発音の仕方などに差があるのは当たり前です。この個性を活かしながらも合唱団としては統一したトーンを作り出さなければならない。そのためには豊富な練習量が必要だと私は考えています。「スコラ・カントールムは1年間に多くても2回しか演奏会をしないんですね」と言われることがあるのですが、1週間に1回、しかも社会人を主とする合唱団の練習では、無理が利かないというのが事実です。愚直に、こつこつと積み上げるというスタイルを失わないようにするのが、私の当団創設時からのモットーです。

「豊富な練習量が必要なのに、練習のない期間がある」というある意味矛盾した形を取る以上、この夏休みは団員各自の自習期間、という位置づけがあります。といっても、学校で宿題を出される生徒ではないわけですから、課題はそれぞれが見つけてくれればよいわけです。音程の怪しい部分があればそこを克服するのもいいでしょうし、海外の音楽祭に行って鋭気を養う、というのも立派な勉強です。日本でも、夏にさまざまな音楽関係の講習会が開かれているので、そこに参加する団員も少なくありません。そして普段仕事で忙しい中、時間をやりくりしている人は「練習がないからとにかくゆっくり休む」でもある程度は構わないわけです(「ある程度は」という付帯条件が重要!)。

さて今年は「搦め手から手を打つ」必要がある以上、私としては団員に休みの間の「材料」を提供する義務が生じます。つらつらと考えてみたのですが、その一つは歌詞の意味と出典を明確にして曲に対するイメージをふくらませてもらうこと、もう一つは演奏会のコンセプトである「ジョスカンとパレストリーナ」についての知識をまとめておくことだろう、と思います。知的なアプローチの効用が練習の成果を凌駕することはないと信じますが、言葉と時代背景を無視した演奏が独善的であることもまた事実でありましょう。指揮者のほうは、夏休み前半に宿題を出された気分です。

今年度の練習は、今のところ概ね順調に進んでいると感じています。11月には、練習の成果とコンセプトが結びついた、エキサイティングなステージをお届けできるように頑張ります。では皆様、これから暑さが増して参ります。お体に気をつけて。


2007年7月27日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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