10月になり、いよいよ東松山「折々の会」サロンコンサートと、「北とぴあ国際音楽祭」参加公演が目前に迫って参りました。残された練習期間はあとわずかですが、最近は練習中に手応えのある響きを感じることもしばしばあります。自己満足は厳に諫めなければならないとしても、団員たちの頑張りが手に取るようにわかってくるのはとても嬉しいことです。
両プログラムは曲目としては基本的に同じ内容ですが、東松山ではプレトークと演奏中の小解説によって、ルネサンスを代表する「伝説」的作曲家であるジョスカンとパレストリーナの魅力をよりわかりやすくお届け致します。曲順も「北とぴあ」とは異なり、ジョスカンの「ミサ・パンジェ・リングァ」の合間にパレストリーナのモテトゥスを挟み込み、両者の作風の違いを交互に味わっていただきます。
「北とぴあ」ではこれと趣向を全く変えます。まず最初にジョスカンの「アヴェ・マリア」を置き、通模倣様式の極めて純粋で効果的な使い方に身を浸そうと思います。続いてパレストリーナのモテトゥスを集中して演奏し、調性和声に限りなく近づいた、均整の取れた模倣様式にご案内します。休憩を挟んでジョスカンの「ミサ・パンジェ・リングァ」を一気に演奏し、もう一度パレストリーナの予定調和的な魅力とは全く異なる、ジョスカン独自のいわば「閉じた世界」を探索致します。
このように同じ曲目を演奏しても、その配列によって様々な楽しみ方ができるのは、何と言っても曲そのものの力に与るところが大きいと言えます。確か皆川達夫先生がお書きになっていたことですが、パレストリーナは俗に言う「ハモりやすい」作曲家だが、ジョスカンは一筋縄ではいかない、非常に演奏が難しいというのです。これは実感として全くその通りですが、パレストリーナも「ただハーモニーを作るだけ」ではなく、歌詞の内容をフレーズの歌い方に反映させ、細かな色合いをつけていこうとすれば、様々な工夫のしがいがあります。その場の思いつき的な、浅はかで表面的な味付けはすぐに馬脚を現します。「パレストリーナくみしやすし」などとなめてかかるととんでもないことになる、というのが正直なところです。特に今回演奏する曲は特に人口に膾炙した名曲ばかりですが、練習のたびに新しい発見があります。あと1ヶ月弱、最後まで愚直に立ち向かいたいと思います。
それにしても、このようにいろいろな演奏の場を与えていただけることについては、ただただ身の幸せを感じるばかりです。私たちのような小さなアマチュア合唱団にたくさんの方の応援があることに、改めて感謝の意を表したいと思います。では、演奏会場で皆様とお会いできるのを楽しみにしております。