2007年も押し詰まりました。本日の練習をもってスコラ・カントールムは今年の活動をすべて終了致します。今年も3度の演奏機会に恵まれ、充実した活動ができたことを感謝したいと思います。
アマチュアの合唱団が、年に複数回の演奏会をほぼ定期的に開いていくのはなかなか難しいことです。今までも何度か申し上げましたように、基本的に私たちは歌うことを楽しむために集まっているわけで、その活動の集積として、演奏会という形で音楽文化に何らかの寄与をしたいという願いのもとに活動しております。本番直前を例外として、日々の練習が「演奏会のための苦行」と化してしまっては意味がありませんし、かといってお客様をお迎えして音楽を楽しんでいただく以上、ある一定のレベル(それがどんなものであるかは定量的に表現できるはずもありませんが)を維持することも大事です。経験則的に言えば、「週に1回の練習に6割の団員が参加するペースを保って、年に1回の定期演奏会開催」がちょうど良いペースだと思います。最近は年に2回、フル規格の演奏会を行うことが多くなりましたが、これは団員の努力のたまものと断言して差し支えありません。仕事や家庭を持ちながら、高いモチベーションを持って音楽に携わることは、音楽を愛することはもちろん、強い意志の力がなければできません。私個人の感想で申せば、今年も団員に助けられた一年であったと思います。そして、秋に演奏の機会を提供していただいた横田誠三様、北区文化財団、北区の皆様にも、ここで改めて御礼を申し上げます。
さて2008年最初の演奏会は3月15日、17回目を迎える定期演奏会です。すでに詳細が「コンサートのお知らせ・今後の活動予定など」に掲載してありますが、今年秋の「コンセプトなし、有名曲一本勝負(?)」という演奏会とは明確に趣向を変え、「第一作法の系譜」というテーマで選曲致しました。「第一作法」とは、音楽史上、バロックの嚆矢を放ったと位置づけられているクラウディオ・モンテヴェルディが使用した言葉です。モンテヴェルディは、通奏低音とその上に構築される和声を音楽構造の中心に置き、対位法の規則を大きくはみ出した新しい作風を「第二作法」と呼びました。しかし彼は古い声楽対位法様式を軽視したわけでは決してなく、それを「第一作法」と呼んで尊重しました。彼の有名な「聖母マリアの夕べの祈り」は豪華絢爛な「第二作法」の代表作ですが、その出版譜には、「第一作法」の世界を追求した「ミサ・イン・イッロ・テンポレ」も付されているのです。これは、フランドル楽派のニコラ・ゴンベールのモテトゥス「その時に(イン・イッロ・テンポレ)」の旋律を用いた模倣対位法によるミサ曲で、モンテヴェルディはこの曲の出版によって、「第一」「第二」どちらの作法でも充実した作品が作れることを証明したかったに違いありません。
モンテヴェルディはこの他にも、各章の独立作品を含めれば相当数のミサ曲を書いています。その中から、今回は比較的よく演奏会に取り上げられる、1651年出版の「4声のミサ曲」を演奏致します。「ミサ・イン・イッロ・テンポレ」に比べると主題はやや器楽的ですが、使われている手法は「第一作法」そのもので、同一の主題をミサの各楽章に用いて変奏させる、一時代前の「循環ミサ曲」の形を取っています。モンテヴェルディの作法としては「おとなしい」部類に入るため、初めて聴く方は「これがモンテヴェルディの作品なのか?」と耳を疑うこともよくあるということです。しかし全体を通して聴けば、模倣対位法の中に初期バロックらしいリズムが吹き込まれているのがはっきりとおわかりになると思います。
この曲を手がかりに、モンテヴェルディに学んだハインリヒ・シュッツの代表作「宗教的合唱曲集」と、バッハのオルガン曲の大作「クラヴィーア練習曲集第3巻」から冒頭の大コラール(=キリエ)3曲、そしてバッハと同じ1685年生まれ、ドメニコ・スカルラッティの「マニフィカト」をお聴きいただきます。「第一作法」は形と品を変えながらもしっかりと生き残り、現在に至るまで影響力を保ち続けています。そのバロック時代における系譜を、代表的作曲家の作品によってたどってみようという試みです。どうぞご期待ください。
今回も、客演にはおなじみの今井奈緒子さん、高群輝夫さんをお迎えすることができました。川口リリア音楽ホールの素晴らしいオルガンを使用して、今井さんに「クラヴィーア練習曲集第3巻」の大コラールを弾いていただけるのも望外の喜びです。皆様お誘い合わせの上是非ご来場くださるようお願いして、ご挨拶と致します。