主宰者(指揮者)ご挨拶


あけましておめでとうございます。随分長い間このご挨拶の更新が滞ってしまいました。忙しいという相変わらずの言い訳をするばかりで、お恥ずかしい限りです。新年を迎えて、今年はもう少し頑張ろうと決意を新たにしております。昨年は3月の定期演奏会終了後、特に公式の活動を行わず、ひたすら週に1回の練習に邁進して参りました。特にラッススの《聖ペテロの涙》を全曲ア・カペラで演奏するという野心的なプログラムに向かって、できる限りの力を注いできたつもりです。当団は年齢構成的に私と同年代の者が多く、ちょうど「働き盛り」が揃ってしまった状態にあります。その中で週に1回といえど、練習時間を捻出して来てくれている団員には、やはり感謝しなければいけません。残された3ヶ月を有効に使って、皆様のご期待に応えるべく努力しようと思っております。

さて今年の計画ですが、年に演奏会2回のペースを確保しようと思います。最近のスコラ・カントールムの活動は、秋に小さなステージを持ち、年度終わりの3月に定期演奏会を持つ、というパターンが確立しています。今年、久々に1年間のスパンで練習してみましたが、何度も同じ曲を繰り返すことで得られることが多かったと思う反面、どうもペース配分が難しいというのもまた事実であったようです。この反省をふまえ、定期演奏会以外に1回、ア・カペラでしっかり練習して、短い期間で仕上げるようなステージを復活させたいと考えております。その具体的なプランはまだ未定なのですが。

ア・カペラのステージを、と強調するのには理由がございます。何度も申し上げてきたことだと思いますが、ルネサンス・バロック期のポリフォニー音楽を主体に演奏している当団の場合、無伴奏でお互いのパートを聞き合って、一番気持ちよくハーモニーする音程を確実に取る練習しておかないと、必ずその力が落ちていくという信念です。ここで言う「一番気持ちよくハーモニーする音程」とは、器楽の不等分律のどれかを指すのではありません。ア・カペラで音を探る作業は、ある音律に自分を合わせるのではなく、自分たちがその曲の音程を作っていくという意識によると思うのです。それをやっておかないと、伴奏楽器に頼った、主体性のない音楽に堕してしまう危険があります。今練習している《聖ペテロの涙》は、実はその典型例、最適の教材でもあると思います。音域の幅広さ、イタリア語の流麗な発音、7声の充実した和声を一番よいバランスではめていく技術(特に耳)、すべてが当団の技術錬磨のためにかけがえのない材料を提供しています。そのようにして培った技術を、いかにして聴衆の皆様に生きた音楽として呈示するか……。楽しみは尽きません。

逆にヘンデルの《主は言われた》は、器楽的な扱いを受けた旋律と和声をどのように構築するかが焦点です。テクニックとコントロールが必要とされる音楽で、合唱団の底力が問われます。今まで養ってきた「合唱団の体力」がどこまで遺憾なく発揮できるか、私自身も期待しながら練習に臨んでおります。ヘンデルの合唱フーガは、バッハのそれとは異なり、大変開放的です。多少の非論理性は覚悟の上で、響きおよび曲全体のプロポーションを最高の状態にするよう、細かい工夫が重ねられています。ラッススとヘンデル、対照的な二つの世界を十分ご堪能いただけるように最後まで頑張ります。当団の第18回定期演奏会に、どうぞご期待ください。それでは当団への変わらぬご指導ご支援をお願い申し上げるとともに、皆様のご多幸をお祈りして、新年のご挨拶と致します。


2009年1月2日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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