主宰者(指揮者)ご挨拶


このご挨拶は、何と年が明けてから2回目の更新です。気がつけばもう目の前に第18回定期演奏会が迫っています。新たな年を迎えてから怒濤のような忙しさに見舞われ、途中体調を崩すこともあって、思うようにホームページが更新できずにおりました。毎度のことながら、皆様には深くお詫び申し上げるばかりです。

しかしこの間、団員の協力もあって練習はスケジュール通り進みました。私にとって最も緊張する二度のリハーサルも無事に終了し、あとは本番を待つばかりです。今回はオルランドゥス・ラッススの「聖ペテロの涙」全曲演奏という野心的なプログラムを組んでおりますので、私も団員もその緊張たるやただごとではありません。演奏時間70分、全21曲をア・カペラで通すわけですから、練習中に様々な不安要素が出てくるのは当たり前です。それをひとつひとつ潰していく作業には、持続する克己心を必要とします。指揮者も歌い手も、この「聖ペテロの涙」という難物と文字通り「格闘」していた、と言って過言ではありません。しかしその過程で、新たに発見される楽音上の美点や、言葉と音楽との適切な協働が必ずあったのです。団員には、長く歌いにくい曲を一年間もかけて練習したことで相当な忍耐を強いてしまいましたが、この経験から得るものは限りなく多かったことを確信します。演奏会でお聴きいただく皆様にも、音楽の大きさ、長さという点で窒息しかかる瞬間も出て参ろうかとは思います(それは決して作曲者の責任ではなく、演奏する側の未熟ゆえです)が、どうか最後まで、歌詞を目で追いながら味わっていただきたいと思います。必ずや、この大曲の並々ならぬ迫力と内容の豊かさがご理解いただけるものと思います。

当日のプログラム冊子には、「聖ペテロの涙」のイタリア語原詩と邦訳をご用意致しました。イタリア語の知識が無くとも、各曲がどのような内容を歌い、激しく悔悟するペテロの心情がいかなるものかを、ある程度把握していただけるように心掛けました。対訳の監修は私が行いましたが、恥ずかしいことに私はイタリア語が全くわかりません。対訳作成に当たって、もちろん勉強はしてみましたが、何しろ古いイタリア語の韻文ですから、私のごとき素人の手に負えるような代物ではありません。対訳の作成に当たっては、既成の邦訳・英訳・独訳を参照するほか、当団員で、イタリア・パルマの宮廷音楽を専門に研究している音楽学者の丹羽誠志郎氏の全面的なご協力をいただきました。ここに記して御礼申し上げます。

ヘンデル「主は言われた」のほうは、リハーサルで客演の皆様から熱心なご指導やご提案をいただき、さらに表現に磨きをかけて本番に臨みます。アマチュア合唱団のアマチュア指揮者が、プロの演奏家を相手に音楽を作っていくのですから、私はリハーサル前に胃が痛くなり、悪夢にうなされたこともしばしばあります。こうした過酷な精神状況にある私に対して、しかし客演の皆様はあたたかく接してくださるばかりではなく、貴重な音楽上のアドヴァイスも惜しみなく与えてくださるのです。こうした方々と共演できる団員が幸せなのはもちろんですが、一番得をしているのは、勉強させていただいている私に間違いありません。文字通り、「有り難い」ことです。

さあ、準備は整いました。3月28日、皆様と武蔵野市民文化会館でお会いできるのを楽しみにしております。


2009年3月24日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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