主宰者(指揮者)ご挨拶


今年の大きな企画である、2週連続の「クリスマス・コンサート」が無事に終了致しました。ご協力いただいた皆様、特に20日の清瀬みぎわ教会でのコンサートのためにご尽力いただいたすべての皆様に、心より感謝致します。13日のコンサートは、いつも練習場としてお世話になっている早稲田奉仕園のスコットホールを使わせていただき、クリスマスにふさわしい、暖かな気分の演奏会を開きたいとの思いで企画しました。当日のプログラムにも書きましたが、当団でのクリスマス・コンサートは8年ぶりの開催です。8年前は同仁キリスト教会での演奏会でしたが、この時に初めて共演していただいたのが、今回オルガン演奏でお世話になった今井奈緒子さんでした。あれから10年近く、今井さんには言葉では言い表せないほどのご支援とご協力をいただいております。本当に、ありがたいことだと痛感致します。

13日の演奏はそうした想いが滲み出た演奏会とすることができ、主宰者として大変幸せに思っております。入場者は128名、この教会にはちょうどよい入り具合で、聴いてくださった皆様とも親密な空間と時間を共有することができました(前回、「100円コンサート」の時には200名ものお客様をお迎えしたため、大変嬉しかった反面、2階席の床が抜けないだろうか、と本気で心配したものです)。当日はやや緊張したところもあり、演奏の精度をもう少し高めなくてはいけないな、と思った部分もありましたが、お客様の熱意がそれを上回り、私も大変な高揚感の中で指揮をすることができました。特に、最後に演奏したスウェーリンクの「今日キリストは生まれたもう」は、和声的にも構成的にも非常に屈託がなく、練習の時にはその単純さをどう克服するかが課題となっていたのですが、実際に演奏してみると、曲が進むにつれて演奏者全員がどんどん「乗った」状態になりました。最後の「アレルヤ、ノエ(「生まれた」の意)」の叫びは、今までこんなに興奮したことがあっただろうか、と思うほどの迫力ある音が迸り、お客様も驚かれたでしょうが、おそらく団員たちも自分でびっくりしていると思います。今井さんのオルガン独奏もいつもどおり素晴らしいものでしたが、実は影の主役(?)は、楽器提供・調律・アシスタントを一手に引き受けてくださった石井賢さんかもしれません。今回その素晴らしい音色をご披露することのできたレガール鍵盤を操作するため、石井さんには大変なご尽力を賜りました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

20日の清瀬みぎわ教会での演奏会は、この教会で20年も続いている「古楽器によるクリスマス・コンサート」の一環として企画されたものです。八角形屋根を持つ印象的な教会堂は大変にコンパクトな空間ですが、草苅オルガン工房製の素晴らしいオルガンが備え付けられています。1997年10月完成、ストップ数8、パイプ数約400本の美しい音色を持つオルガンです。制作者の草刈徹夫さんは前日から調律でいらっしゃったとのことで、当日の演奏も聴いていただきました。今井さんは1週間前のレガール付きポジティフとは異なった魅力をこのオルガンから存分に引き出してくださいました。

歌ってみてびっくりしたのは、天井が際だって高いというわけでもないのに、残響の豊かな、言ってみれば「リッチな」音がしたことです。いろいろな場所に跳ね返ってくる音が演奏者のほうにもよいブレンドで到達するので、大変に歌いやすいという声が団員から口々に上がりました。建築者の慧眼と言うべきでしょう。会場には教会ぎりぎり一杯の80名以上のお客様にお出でいただき、牧師の和田道雄先生の絶妙なお話を交え、クリスマス気分に満ちた幸せな一夕を過ごすことができました。演奏会後に行われたパーティではたくさんの手作りのお料理に囲まれ、「こんなに充実したクリスマスを過ごしたのは初めて」という団員の声が続出しました。演奏する自分たちが一番楽しんでしまったのではないか、と少し心配ですが、8年ぶりにこのような企画を行って本当によかったと思います。そして素晴らしい人と音楽との出会いを作ってくださった今井様、清瀬の皆様に心からの感謝の念を捧げます。

さて新しい年は、3月7日の定期演奏会、バッハの「ミサ曲ロ短調」に向けて邁進致します。とかく難しいことの多いこの曲ですが、今回のような素晴らしい人と音楽との出会いがあると、また挑戦への勇気もわいてくるというものです。どうぞご期待ください。それでは皆様、この一年のご厚情を感謝申し上げます。来る年もまた、よい年でありますように。


2009年12月28日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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