主宰者(指揮者)ご挨拶


2日後に第19回定期演奏会、《ミサ曲ロ短調》の本番を控え、今私の心の中には言葉にならない期待と不安が交錯しております。やはり「ロ短調」はあまりにも偉大かつ演奏至難、「究極の傑作」なのだな、というのが2回のリハーサルを終えた現在の率直な感想です。しかしプレーヤーの皆さん(もちろん合唱団も)の自発的な音楽の発露がぶつかり合うのは、緊張と冷や汗をもたらす以上に、私の中に今まで全く見えてこなかった様々な視点を提供してくれます。リハーサルと本番に勝る勉強はありません。この1週間、演奏会関係の悪夢を見る日も少なくなかったのですが、アマチュアである私や合唱団が努力出来ることは全てしてきたのだ、あとは人事を尽くして天命を待つ、という心境です。音楽に限らず、何事も死ぬまで勉強の連続なのだと痛感致します。

その意味でも、20年の節目となる今回、《ミサ曲ロ短調》を演奏することは決して間違っていなかった、という意識が、演奏会を間近に控えてますます高まっております。曲の偉大さに押しつぶされそうになりながらも、練習するごとに、常に新たな課題が浮かび上がり、それを克服しようと努力する姿勢を育ててくれます。私たちがこの先どれほどの歩みを積み重ねることができるかは知るよしもありませんが、残された時間がいかほどであれ、どのような音楽に対しても謙虚に向き合うことが大切なのでしょう。ともするば経験と慣れに頼りがちな私にとって、この演奏会は貴重な自己反省の場ともなりました。団員にとってもそれは同じだと思います。

さて今回はもう一つ、慣れに逃げ込みがちな私たちが「慣れていないこと」があります。それは、日曜日のマチネの演奏会であるということです。今まで私たちは、土曜日18:30開演の演奏会を多く開いてきました。団員が予定を立てやすく、翌日の日曜日で疲労を回復することも容易だからです。しかしお出でくださるお客様からは、なるべく午後早い時間に始まって夕方の家族の団欒などを確保できるほうがありがたいというお声を多く頂戴しました。そこで今後は日曜のマチネを基本に定期演奏会を組んでいくことに致しました。15時開始の演奏会は10年ぶり、第9回定期演奏会でバッハの《ヨハネ受難曲》を取り上げて以来のことです。当日は朝からの練習を行い、午後までにコンディションを最良に持って行かなくてはなりません。幸い当団以外でも様々な演奏経験を積んだ団員が多く、その点はあまり心配しておりませんが、いろいろな面で「いつもと違う」この演奏会を私自身が楽しんでおります。お聴きいただく皆様にも、「今、その場で生まれる音楽」の醍醐味を味わっていただければと念じております。

予報では、当日の天気は上々とは言いかねる状況らしいのですが、今までにも大雨、雪、春一番の突風と、悪天候の中の定期演奏会は数多くございました。今回はどうなるのでしょう。そんなことも楽しみながら本番を迎えたいと思います。では明後日、武蔵野市民文化会館小ホールにてお会い致しましょう。


2010年3月5日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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