年の瀬となりました。このところ、一年が過ぎていくのがひと際早く感じられます。私の場合、それだけ充実した日々を送っているのだと言えば聞こえは良いのでしょうが、実のところは仕事や雑事に追いまくられて、気がついていたら年末を迎えていた、というのが正直なところのような気もします。しかし昨年今年と、当団はクリスマスに得がたい経験をさせていただくことができました。昨年に引き続き今井奈緒子さん、そして今年は波多野睦美さんとも共演がかない、クリスマスにふさわしいコンサートを開くことができたのです。
昨年は清瀬みぎわ教会という、アットホームな雰囲気(そしてそれにふさわしいオルガン)の素晴らしい響きの中で演奏会を設けていただき、団員一同感激したものです。今年は転じて国際基督教大学の礼拝堂、500人以上収容できる大きなチャペルです。そこに据えられた日本の本格的なパイプオルガンの草分け、リーガー・オルガンの音色を間近に感じながら歌うことができました。 二年続けて楽しい演奏会(そう、まず私たち自身が楽しんでおりました)を経験できたのは、本当に幸せなことだと思います。この場をお借りして、企画してくださった国際基督教大学の伊東辰彦先生に御礼を申し上げたいと思います。そして、当日までの事務一切を取り仕切っていただきました同大学の浅見敬子様にも、心からの感謝を捧げます。
当日は400人以上ものお客様においでいただき、嬉しいと同時にややプレッシャーも感じる一夕となりました。何と言っても当代を代表する名手のお二人と共演して、これだけ多くのお客様の前で歌わなければいけないのですから。休憩後すぐに演奏された、お二人のパーセル「夕べの賛歌」のあまりにも清澄な世界に息を呑まれた方も多いと思います。私たちの演奏したバッハのカンタータやガブリエリ、シュッツ、そして作曲者不詳のクリスマス音楽はかなり地味な曲ですので、皆様にその魅力がどの程度伝わったか心配なところです。しかし、練習の成果はしっかりと出すことができたのではないかと思っております。皆様の忌憚のないご批判を頂戴して、次の定期演奏会につなげてまいりたいと存じます。
今回の演奏会では、波多野さんの緩急自在、ファンタジーあふれる歌の世界に圧倒されました。隣で歌っていたアルトの団員が舞い上がってしまったのも無理はありません。そしてそれを支えていただいた今井さんの大変な演奏力には、ただ脱帽です。第4ステージのバッハとヘンデルで、全声部をトレースする、あるいはオブリガートの管楽器・弦楽器・通奏低音の3パートをオルガンで弾きこなす、という技術は、強い精神力の支えがあって初めて可能となるものです。今井さん自身、志を高く持たなければこのようなことは出来ないとおっしゃっていました。それは、ただの初心者アマチュアオルガン弾きである私にも、十分理解できることです。今井さんの至芸に、もう一度ここで拍手を送りたいと思います。
こうして今年も、当団にとって実り多い一年が終わろうとしております。来年はいつもより少し早く、2月13日にいつも武蔵野市民文化会館小ホールにて、第20回の節目となる定期演奏会がございます。15年前に演奏したバッハの「イエスよ、わが喜び」と、ドメニコ・スカルラッティの有名な「スタバート・マーテル」という組み合わせです。私たちとしては、前回の「ミサ曲ロ短調」と同様、かなり意欲的なプログラミングになりました。ステージを造り上げていくにつれていつも、皆様方のご支援・ご指導がなければ、これほどの活動を実現することは不可能であったと実感します。皆様、来る年も当団への倍旧のご支援をお願い申し上げます。そしてどうぞ良いお年をお迎えください。