主宰者(指揮者)ご挨拶


第20回定期演奏会が行われたというのに、一向に更新されない当ホームページをいぶかしい思いでご覧になっていた方も多いと思います。言い訳がましいのですが、今回は私の怠慢ではありません。演奏会を目前に控えた1月29日、私のパソコンが何の前触れもなしに起動しなくなってしまったのです。演奏会の事務に関する資料など、最低限のバックアップはとってあったので合唱団の運営にはさほど支障がなかったのですが、メールが使えなくなってしまったことと、ホームページの更新が出来なくなったことは大変な痛手でした。こうなっては嘆いても無駄ですから、ホームページは放置を決め込み、データの救出を最優先に対処致しました。まずは演奏会を無事に終わらせること、これが何よりも大切なことでありました。演奏会後も年度末の仕事に追われてしまい、新規にパソコンを購入し、出来る限りのデータを取り出して復旧させ、何とか一応の形を整えることが出来たのは今月になってからです。皆様にはご心配をおかけし、誠に申し訳なく思っております。

(それにしても、昨今パソコンがかなりの廉価で手に入るのには驚きました。データの救出代よりも安いのです。今まで使っていたのはwindows-xpですが、windows7は機能が飛躍的に高性能化しています。しかし以前使っていたスキャナやソフトがwindows7には対応していないことも多く、パソコン音痴の私にはまた痛い出費が続きます。結局世間というものは、かかるお金に大して差がないように出来ているのでしょうか。)

泣き言はここまでにして、本題に入りましょう。2月13日に行われた第20回定期演奏会は、天候にも恵まれ、233名のお客様をお迎えして無事に終了致しました。今回は、第17回定期演奏会「第一作法の系譜」に匹敵する「渋め」のプログラムだったため、集客には大変な不安がありました。また200人の大台を割るのではないか、と気を揉んでいたのですが、蓋を開けてみれば多くの熱心なお客様に聴いていただくことが出来ました。心から御礼申し上げます。今回は難曲であるバッハのモテット「イエスよ、わが喜び」に加えて、10声という大きな編成ゆえ滅多に演奏されることのない、ドメニコ・スカルラッティの「スタバート・マーテル」に挑戦致しました。数々の問題を残しながらも、当日は練習の成果がすべて出し尽くされたと思います。それはもちろん、的確なサポートをしていただいた客演の皆様のお力があってのことです。久々の共演となった西沢央子さん、昨年に引き続いての西澤誠治さんのお二人は、一筋縄ではいかない「スタバート・マーテル」の通奏低音パートに様々なアイディアを出してくださり、バッハでも文字通り「熱演」してくださいました。初めての出演となったリュートの佐藤亜紀子さんは、「スタバート・マーテル」の世界に不可欠な「撥弦楽器の魅力」を十分に表現してくださいました。そしておなじみの今井奈緒子さんには、バッハの大曲「ようこそ、慈悲厚きイエスよ」全曲を演奏していただきました。ステージに乗っている時間が一番長かったのは今井さん、というある意味笑えない事態が生じたわけで、私たちのわがままをお聞き届けくださり、見事な演奏を聴かせていただいたことに感謝申し上げます。

実は今回、私のパソコン故障などという生易しいものではない、様々な問題が直前になって生じておりました。それはやむを得ないものばかりで、乗り越えなければならない性質のものではありましたが、苦しい練習に耐えて本当に乗り切ってくれた団員の意気込みは特筆しておかなければなりません。今回ほど、「皆で作り上げた演奏会」という言葉が実感として迫ってきたことはありません。こんなことを白状するのはルール違反かもしれませんが、私は、アカペラで演奏した「わが魂は憂いて」の中間付近で、"Jam" という歌詞に付けられた和声が、その言葉の意味を音で完全に言い表しているのを感じ取ったのです。自分たちの作り出している音楽に酔ってしまってはいけないのかもしれませんが、この時、私は昨年「ミサ曲ロ短調」の「十字架に付けられ」を演奏した時と同じように、魔法にかけられたような陶酔感の中で涙が溢れてしまいました。こんな一瞬を現実のものとしてくれた団員たちには、ただ感謝の言葉を捧げる以外の術がありません。

この貴重な経験を生かして、22年目のスコラ・カントールムも、なまなかなことではびくともしない力強さと、音楽に対してはあくまで繊細な感覚を持つ合唱団を目指して精進して参りたいと思います。どうか倍旧のご支援を賜りますようお願い申し上げます。


2011年3月8日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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