主宰者(指揮者)ご挨拶


節電と猛暑の夏が終わり、やっと涼しくなったと思ったら、昨日は真夏日の再来となった都市もあるとのことで、まことに今年の日本は自然の厳しさを思い知らされる巡り合わせなのだなと思います。夏を思わせる気候に接すると、「実は次の春が来て早々に演奏会があるのだ」という意識を希薄にしてしまいそうです。しかし暦は無情にも時の経過を教えてくれます。第21回定期演奏会に向けて、本格的ダッシュをかけなければならない時期となりました。

ただありがたいことに、年に2回演奏会を行う年に比べればじっくりと音楽に向き合うことのできたこの半年でした。団員にとっては酷な要求だったと思いますが、バッハのモテットなどパートを2つに分ける必要のある曲では両方の譜読みをしてもらいました。練習では日替わりでどちらのパートも歌えるようにしたわけです。これは「相手のやっていることがわからなければ、自分のやっていることもわからない」という意識を持って本番に臨んでもらうためです。練習の効率を考えたらとんでもない話ですが、今年のように時間的に少し余裕のある年に関しては、こうした試みが「急がば回れ」で功を奏しつつあるのではないかと思います(とはいえ、本番の出来が悪ければ大きなことは言えませんが)。

ところで、私たちは常時25〜30名程度の編成で活動しておりますが、それは決して団員の補充を行わないということではありません。特に今回のプログラムのように、バッハの二重合唱モテットということになりますと、どうしてもある程度のボリュームが必要となります。また昨今痛感していることですが、ラッススの宗教的大作は、少人数のアンサンブルよりも、いわゆる「合唱」で歌う方がイメージの表出がしやすい、という事実もあります。肉厚の和声を自在に連結していくラッススの作風は、パレストリーナとは異なるのです。ルネサンスのポリフォニー音楽をアカペラで演奏する、あの有名なタリス・スコラーズのレパートリーの中心がパレストリーナであり、ラッススはほとんど演奏されない(CDもたった1枚しか作られていません)ことを考えても、私の実感がおわかりいただけると思います。
そこで、2012年3月の定期演奏会を目指して、私たちと一緒に活動してくださる団員を若干名募集致します。人数バランスから考えて特に募集したいのは男声ですが、もちろん女声も大歓迎です。コンテンツ欄に「団員募集」のコーナーを作りましたので、まずはそこをお読みください。誠に申し訳ありませんが、半年後には演奏会ですし、極端に人数を増やすことはできませんので、「来るもの拒まず」という訳には参りません。簡単なオーディションをさせていただきますことをお許しください。皆様のご応募を心よりお待ちしております。

なお二重合唱モテットにもびくともしない合唱団を作る、ということ、それは「数年後に、二重合唱を用いたバッハの〈あの〉作品を演奏しようという計画があるからだ」ということも、蛇足ながら付け加えておきましょう。ご期待いただければ幸いです。


2011年10月20日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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