主宰者(指揮者)ご挨拶


皆様、あけましておめでとうございます。

当団創設から満23年が経ちました。このところそうした時の流れにあまり実感のわかない生活を送っていたのですが、今年は少し厳粛な気分で幕開けを迎えた気がします。私が高校・大学時代にお世話になった恩師の皆さんが次々と鬼籍に入られたことがその一因であることは間違いありません。その最たるものが、昨早春に飛び込んできた鈴木仁先生の突然の訃報でありました。その他、私が直接教えを請うたわけではないにせよ、音楽界の巨星が次々と墜ちたことに、時の流れの残酷さを教えられました。なかでもグスタフ・レオンハルト、ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(あれだけの大歌手の逝去に対し、報道や特集が少なかったのはなぜなのでしょう)、吉田秀和という一時代を画した方々とのお別れは、もちろん年齢的に見て来るべきものが来たのだとは申せましょうが、寂しさを禁じ得ません。加えて日本の現状、特に教育現場の姿を振り返ると、「自分が肌で感じ取り、それが正しいと思って行動してきたこと」の根本的な再検討を余儀なくさせられています。過ぎゆく時を惜しみながらも、もう一回ねじを巻き直し、再出発しなくてはならないのだな、とうのが偽らざる年頭の所感です。

さて年明け1ヶ月半で、私たちは第22回定期演奏会を迎えます。今回は意図的に「メジャーな路線」を狙ったわけですが、やはり「名曲」といわれる曲にはそうしたオーラが漂うものなのだな、と感じます。特にカンタータ第78番の冒頭合唱は、練習であっても時々胸をぐさっとえぐられるような感覚に捉えられることがあります。現在は各曲とも細かい詰めの練習に入っていますが、曲の持つスケールの大きさに負けないよう、心を強く持って、最後まで励みたいと思います。また、以前に「珍品」とご紹介した「目覚めよと呼ぶ声あり」というモテット(大バッハの息子、ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハの作品)ですが、これも実は隠れた名曲だと断言したい気持ちに駆られます。演奏する側にとっては、高音域の分散和音の連続など「疲労感満載」の曲なのですが、響きのよいホールで、楽器のサポートを付けて演奏すると、色彩感に溢れ、高揚感がみなぎるに違いありません。どうかこちらもご期待いただきたいと思います。まだチケットには(残念ながら)余裕がございますので、どうか皆様お誘い合わせの上、2月11日には三鷹市芸術文化センター「風のホール」に足をお運びくださいますよう、心からお願い申し上げます。

このところホームページの更新も思うに任せない日が続いておりますが、これも義務と思うとやりきれませんので、無理のない範囲で、しかし誠意を持って運営して参りたいと思います。このような拙いサイトにもたくさんの方にご訪問いただいており、感謝するとともに不行届をひたすらお詫びする次第です。では本年も当団をよろしくご指導ご鞭撻ください。


2013年1月1日
スコラ・カントールム代表
野中  裕


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