主宰者(指揮者)ご挨拶


7月が終わります。第23回定期演奏会「バッハ/マタイ受難曲」から終了からすでに1ヶ月近くが経とうとしております。この間、ホームページの更新を行うことができずにおりましたのは、決して演奏会が終わって放心状態になっていたからではありません。演奏会のために滞っていた仕事がついに飽和状態になってしまっていたというのが実態で、お恥ずかしい限りです。吹奏楽部の合宿を終えて帰京した後、残務処理を行ってやっと少し休みが取れました。

「マタイ」の演奏会につきましては、終演直後から様々な方のご感想を頂戴いたしました。概ねご好意に溢れたものばかりで、当日の演奏会がほぼ皆様にご満足いただけるものになったのではないかと思っております。団員も終演後、「あのように大きく、いつまでも続く拍手に送られて退場したことはない」と感激しておりました。「マタイ」は譜読みをして破綻なく歌うだけでは、何もしていないのと同じです。団員一人一人の「受難」の理解と、それを確実な技術に乗せてたった一回の本番で表現する集中力が無ければ、お聴きいただく皆様の胸に響くような演奏をすることは絶対にできません。今回の演奏に関しては、1年半もの間、楽しいとばかりは言えない練習によく付き合ってくれた団員たちの頑張りが、確かに実を結んだと言ってよろしいかと存じます。パートの音色を揃えるため、まるで合唱コンクールに出場する高校生のように、パートをばらばらにしたり、丸くなったり、いろいろと立ち位置を変えながら、妥協することなく「パートとしての響き、今ある36人の〈スコラ・カントールム〉の響き」を追求した日々が、つい最近のことなのに、もう懐かしい思い出のような郷愁をたたえて私の脳裏によみがえってまいります。

団員の頑張りもさることながら、客演の皆様のお力が絶大であったことは論を待ちません。今回の声楽ソリストはすべて私が直接お声がけをさせていただいた方々ばかりですが、これほどのキャストを集めることができたのは奇跡としか言いようがありません。そして今まで何回も共演させていただいた弦楽器・管楽器・通奏低音の皆様は、時に厳しく、しかし常に私を見守るように演奏上の難点を指摘し、克服していかれました。第39曲と第42曲の独奏ヴァイオリン付きアリアの演奏(ソリストが抜けた分の奏者補充)における具体的なヒントをいただいたこと、石橋メモリアルホールの大オルガンでソプラノ・イン・リピエーノを演奏できるようにしてくださったこと、そして何より、この豪華なメンバーが時間をかなり押してまで自主的に練習してくださった姿は、私と団員にとっておそらく、生涯にわたって忘れられない感激となるでしょう。

そしてご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。客演の方から、「今回ほど、よく入念に仕上げられて、それが耳の肥えたお客様に伝わり、感動をまきおこしたということはなかった」という感想を頂戴いたしました。音楽を、「マタイ」を愛する方々にお集まりいただき、懸命に耳を傾けていただけたことも、私たちの大きな財産です。今回は第22回定期演奏会で記録した当団最多集客数の415名を大きく上回る、485名のお客様にご来場いただきました。石橋メモリアルホールの定員が508名ですから、何と座席の96%が埋まっていた計算になります。演奏会直前にチケットが完売状態となり、ご来場いただけなかった方々もいらっしゃいます。何とお詫びを申し上げて良いかわかりません。「もう少し広いホールでもよかったのでは?」という声もありましたが、演奏者の人数と演奏のプロポーションを考えると、1000人規模のホールはやはり考えにくいのです。さらに石橋メモリアルホールの理想的な音響が、今回の演奏会の影の立て役者であることは間違いありません。どうか御寛恕を賜りたいと思います。

合唱団スコラ・カントールムの歴史は、これで終わったわけではありません。私たちは夏休みを取った後、8月23日から活動を再開いたします。すでに第24回定期演奏会を、恒例の武蔵野市民文化会館小ホールにて2015年7月18日に開催することが決まっています。現在その内容を検討すべく、私は新たな研究と構想に立ち向かっているところです。どうか「マタイ後」の当団の活動にも、今までと変わらない御支援御鞭撻をお願い申し上げます。


2014年7月31日
スコラ・カントールム代表
野中  裕

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