主宰者(指揮者)ご挨拶


第24回定期演奏会の終了から10日が経ちました。ご来場いただいた皆様、関係者の皆様、本当にありがとうございました。今回は久々のオール・アカペラ・プログラム、しかも取り上げる曲はなかなかの難物揃い、というわれわれの底力が試される演奏会だったのですが、オール・アカペラとしては最高の記録となる、300名近いお客様に温かく見守っていただくことができました。ともあれご好評のうちに終了することができ、ほっと胸をなで下ろしております。

今までもそうではありますが、今回ほど団員一人一人の力と意欲を感じた演奏会はありません。何度かこのホームページでもお伝えしましたように、アマチュアの小さな合唱団にはどうしても物理的時間的な制約があり、それをどうやって克服するかは団員の自主的な努力にかかっております。譜読みをして、時間をやりくりして練習に出席するだけでも大変な中、団員たちは正規の練習以外に自主練習を組んだり、練習の録音を共有して克服すべき点を確認したり、聖書のテキストを掘り下げて解説したり、と様々な、大きな努力を払ってくれました。とりわけ私が心を打たれたのは、本番の日、最後の練習が終わった後、楽屋で黙々とその最後の練習の録音を聴きながら、細部にわたって歌い方やバランスをチェックしていたある男声団員の姿です。こうした熱意に支えられたからこそ、当団の活動は四半世紀の年月を数えることができたのだと思います。団員に恵まれた私がしたことと言えば、それこそ全体の音響像のチェックに過ぎません。とりわけ最後の1ヶ月は「ある程度歌えてきたけれども、もう一つ突き抜けてこない」という焦りを感じる時期なのですが、ここを指揮者の叱咤ではなく、団員の自主的な努力で越えていけたことに、私は大きな誇りを感じます。

実際に本番でどのような音楽を皆様にお届けできたのか、これもいつも申し上げているとおり、これから録音を聴いて謙虚に反省していくところではあります。しかし、この一年間の活動を通して作られた「自分たちの目指す音楽の方向性」は、私にはっきりとした自信を持たせるに十分なものでした。おそらくは、今までのオール・アカペラ・プログラムの演奏会に比して、どこか一皮むけた演奏ができたのではないか、と密かに期待しております。

さて演奏会にいらっしゃった方には当日のパンフレットで告知を致しましたが、次回の定期演奏会の概要が固まりました。第25回定期演奏会は、2016年7月10日(日曜日)に、川口総合文化センター・リリア音楽ホールにて開催いたします。曲目は、今回演奏した「グレゴリオ聖歌に基づく4つのモテット」の作曲者、モーリス・デュリュフレによる「レクイエム・オルガン伴奏版」です。至難のオルガン・パートの担当は、いつも私たちの演奏を支えてくださる今井奈緒子さんです。リリアホールの大オルガンの響きと、私たちが今回培ったアンサンブルの力をどう組み合わせていくか、私も大きな不安と共に、計り知れないほどの喜びと意欲を感じております。またこの曲では、チェロと独唱が量的な比重は低いにもかかわらず、極めて重要な役割を担っております。チェリストと独唱者、そしてこれ以外の演奏曲につきましては、また決まり次第このホームページにて発表いたします。

古楽を専門的に取り扱ってきた当団が、20世紀の宗教曲の白眉とも目される「デュリュフレのレクイエム」を演奏する団体にまでなりました。今回の「グレゴリオ聖歌に基づく4つのモテット」があまりにも美しく、団員皆がその世界に魅せられたというのが選定の大きな理由です。愛する団員とともに、その団員が歌いたい曲を作り上げて行ける。主宰者にとってこれ以上の幸せがあるでしょうか。今後とも、当団への御指導御支援をよろしくお願い申し上げます。


2015年7月28日
スコラ・カントールム代表
野中  裕

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