主宰者(指揮者)ご挨拶


当団の第25回定期演奏会は、前回を上回るちょうど300名のお客様をお迎えして、無事に終了致しました。このところの諸外国の痛ましい状況を鑑みますと、一つの行事が無事に終わったということのありがたさを改めて感じざるを得ません。この間お世話になったすべての方々に、心から御礼を申し上げたいと思います。

今回の演奏会は、私にとって苦闘の連続であったことを、ここに告白しなければならないでしょう。私はアマチュアの音楽家ですので、専門的な音楽の経歴というのは一切無いのではありますが、それにしてもドイツ・バロックの宗教曲、とりわけヨハン・セバスティアン・バッハを中心に研究してきたことは事実であります。そんな私がプーランク、デュリュフレ、果ては存命で活躍中のブストまでを取り上げなくてはならない、となった時、そのプレッシャーがどのくらい大きいものだったかはおそらく皆様お感じになっていただけると思います。いくら歌詞がラテン語だといっても、フランス語が皆目わからない私にとっては、その雰囲気を出すだけでも至難の業です。

こういうときはいつも、「ラテン語は普遍語なのだから、イタリア語の方式で虚心坦懐に読んでいけばよい」と開き直るのですが、さてプーランクの厳粛かつお茶目な魅力が皆様にお届けできたかどうか、私としては戦戦兢兢です。しかし、私よりもこうしたジャンルをよく知り、今まで歌い込んできた団員たちに、私は練習時に何度も助けられました。とりわけ恐る恐る勉強し始めたデュリュフレの「レクイエム」ですが、今となっては私の最も愛する曲の一つになってしまっています。一年間苦闘したことの愛着もさることながら、これは何と美しく、何という愛の説得力に満ち溢れた曲なのでしょうか。今回、メゾソプラノと独奏チェロのために書かれた第5曲「ピエ・イエズ」を指揮しながら、私はどこか遠い世界から力強い愛の魂が降り注いできたように思われたのです。こんな体験をさせてくださったソリストの北條加奈さん、チェロの高群輝夫さん、そして合唱が続く中で要所を占めるバリトン・ソロを的確に披露してくれた当団の西久保孝弘、至難のオルガンパートを烈々たる感情を込めて弾いてくださった今井奈緒子さんに、心からの感謝を捧げたいと思います。そして何より、私を助け、励まし、時には叱咤してくれた団員ひとりひとりにも、厚い感謝の意を表することをお許しいただきたいと思います。

演奏の成果については、いつものとおり自分たちでどうこう言える問題ではなく、皆様の感想を拝読し、録音を聴いて反省していくしかありません。ただ、昨年もそうですが、私としては特に今年、「よく勉強したなあ、かなりスコアが汚れたなあ」という満足感があります。この経験をさらに次に生かして行ければ、と願うのみです。ちなみに、当日川口駅前某店で行われた打ち上げでは、団員たちの満足感と開放感が相まって、相当な量のアルコールが消費されたことも、ここに付け加えておくべきでしょうか。

さて演奏会の余韻に浸る間もなく、私たちは「ヴォチェス・エクスプレセ」としての活動を再開しました。この合唱団は以前にも書きましたとおり、当団の団員を核に、昔私が歌わせていただいていた「コレギウム・ヴォカーレ東京」の元メンバーなどを加え、佐藤雄一氏の目指す音楽を理想的に実現することを目標としています。10月2日(日)、府中芸術劇場ウィーンホールにて、ヘンデルの「メサイア」をアマチュアオケの「メサイアシンフォニア」と共演致します。どうぞご期待ください。そして12月10日(土)には国際基督教大学宗教音楽センターの「クリスマスコンサート」に出演致します。ここでは、私たちのアカペラ・ステージに加えて、やはり「メサイア」の第一部のみ(加えて全体の最終曲)を演奏する予定になっております。クリスマスに相応しい演奏会とするため、受難を扱う第二部、人間の死の克服について述べる第三部は省略となります。こちらではおなじみの客演の皆様をお招きし、古楽器による極小編成を採っております。色合いの異なる二つの演奏会、どうぞ皆様お誘いあわせの上ご来場ください。

第26回定期演奏会、ならびに2017年度の活動につきましては、当団の総会終了後、確定した時点をもって、また当ホームページにて発表致します。それでは、今後とも当団をよろしく御指導御鞭撻くださいますようお願い申し上げます。


2016年7月19日
スコラ・カントールム代表
野中  裕

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