主宰者(指揮者)ご挨拶


10月になりました。今年も残すところ3ヶ月となってしまいました。全くの私事で申し訳ありませんが、先日、私は50歳の誕生日を無事に迎えることができました。こうして半世紀を生きることができ、好きな音楽を奏でることが許されているのは、いささかの幸運と、周囲の方々の御支援の賜物です。本当にありがとうございます。

「全くの私事」を書いてしまったついでに、昨日行われた「Messiah 2016」についても、私の極めて個人的な感慨を記すことをお許しいただきたいと思います。この演奏会はそもそも、志の高いアマチュア・オーケストラの方々が「メサイア」全曲を演奏しようと企画したところに始まりました。そしてご縁があって佐藤雄一さんを指揮者にお迎えすることになり、さて合唱をどうしようかといったところで、佐藤さんが主宰していた「コレギウム・ヴォカーレ東京」のメンバーと、当団のコラボレーションの企画が持ち上がったのです。「コレギウム・ヴォカーレ東京」は1980年代後半に、日本で本格的に「ピリオド楽器と共演できる唱法を取り入れた合唱団」の草分けとして着実な活動を行っておりました。私は1988年に「コレギウム・ヴォカーレ東京」の一員となり、多くのことを実地に学ぶことができました。今や世界的に有名となった若き日の古楽奏者たちも、多くこの合唱団と共演してくださっていたのです。私も佐藤さんもまだ20代、その頃「栃木[蔵の街]音楽祭」が産声を上げ、「タリス・スコラーズ」の来日公演が始まり、いよいよ日本でも本格的に古楽を演奏する下地が整っていった、そんな頃でした。

私としては、自分が音楽を本格的に続けて行く土台を築いてくれた合唱団のメンバーと、自分が立ち上げて26年間関わった合唱団が、手を携えてヘンデルの大曲に挑むということ自体に、ある種の感慨を覚えざるを得ないのです。しかも、初めてお会いした30年前と全く変わらない音楽への情熱をたぎらせる佐藤さんの指導と指揮のもとです。生きていれば、こんなに素敵な経験ができるのだ、と改めて感じた一日でした。

演奏会としての出来や、合唱が佐藤さんの意図をどこまで表現できていたかなどについては、いつものように聴いていただいた皆様のご意見を謙虚に伺う以外にありません。しかし昨日の演奏は、「持てる力はすべて惜しみなく出すことができた」と確信するに足るものでした。当団として、貴重な経験、そして自信になったことは間違いありません。佐藤さんをはじめ、オーケストラ「メサイアシンフォニア」の皆様、そして関係者の皆様に厚く御礼申し上げる次第です。

さて私たちはこの貴重な経験を糧に、12月10日の「国際基督教大学クリスマス・コンサート」に臨みます。チラシ・チケットが完成したとのご連絡もいただいており、今後本格的なご案内を差し上げることになります。どうぞ皆様お誘い合わせの上ご来場ください。そして今年も最後まで、皆様の御支援、御指導御鞭撻をお願いする次第です。


2016年10月3日
スコラ・カントールム代表
野中  裕

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