去る12月3日に、国際基督教大学クリスマス・コンサートのリハーサルがありました。毎度のことですが、リハーサルは私にとって最大の緊張を強いられます。6年ぶりに演奏するチャペルは、以前と全く変わらない美しい響きで私たちを迎えてくれました。残響が適度で響きすぎず、言葉がクリアーに聞こえますので、今回演奏するプーランクの「クリスマスのための4つのモテット」には最も適した会場なのではないかと嬉しくなりました。国際基督教大学のマット・ギラン先生をはじめとする皆様には大変にお世話になり、こまごまとした事務手続きをすべて完璧に進めていただいております。このように恵まれた環境で演奏できる私たちは、ただ幸せと申すべきでしょう。
今回のステージは、前半が合唱団だけのオール・ア・カペラ・プログラム、後半がヘンデルの「メサイア」第1部です。前半で演奏する曲はすべて今年7月の第25回定期演奏会にて取り上げたものですが、その後半年の練習を経て、さらに演奏の精度を増すべく努力して参りました。新しい趣向も組み込んでありますので、7月においでいただいた方にもまた楽しんでいただけると思います。後半の「メサイア」も、合唱団「ヴォチェス・エクスプレセ」として長く佐藤雄一さんの指導を受けた後ですので、自信を持ってお届けできる状態に仕上がっております。加えて客演の皆様は斯界を代表する実力者ばかりですし、当団から羽ばたいたテノールの大貫浩史、バスの西久保孝弘が、ソリストとして初めて当団で共演するのも感慨深いものがあります。3日のリハーサルでは、相変わらずうだつの上がらない指揮者を、客演の皆様全員が暖かく見守ってくださいました。アマチュアの私がプロの皆様を指揮するという厳しい道を自分で選んだ以上、こんなことではいけない、もっと自立しなければと思います。しかし、緊張の極度に達するとはいえ、リハーサルが終わると今まで見えなかった問題点がはっきりとし、自分のやるべきことと到達すべき目標が定まります。「一度の本番は百度の練習に勝る」というような言説を耳にしたことがありますが、なるほど「本番ありきの練習」がどれほど集中力を高めるか、いつも身をもって感じている次第です。
今年もいろいろなことがありました。個人的なことになってしまいますが、やはり50歳という区切りの年を迎えて、課せられる社会的な責任も大きくなり、自分の時間がなかなか取れなかったことが大きな反省です。しかしその中でも、音楽は常に私を支えてくれました。11月29日には、河出書房新社様から「カール・リヒター/不滅のバッハ伝道者」というムック本が出版されました。未熟な私ではありますが、「カール・リヒター論」を執筆したご縁で、その巻頭言およびCD紹介を任せてくださったことは、大きな喜びでした。さらに、スコラ・カントールムの仲間と共に年に3回もの演奏機会に恵まれ、充実した音楽活動を送ることができたことは、何にも代え難い喜びであります。
では皆様、今年の締めくくりの活動、今週末10日土曜日の国際基督教大学のクリスマス・コンサートに、どうかお誘い合わせの上ご来場ください。おかげさまでチケットは相当の枚数がすでに売れているようですが、当日14時30分より当日券の販売もございます。お聴きいただき、忌憚のない御意見御指導を賜れれば幸いでございます。
2016年12月8日
スコラ・カントールム代表
野中 裕