主宰者(指揮者)ご挨拶


第26回定期演奏会が、明後日に迫りました。すでにバッハのリハーサルは終了しております。明日、合唱団のみの最後の練習が終われば、あとは本番を迎えるのみです。少しでも充実した演奏になるよう、明日の最終練習でもねばり強く弱点の克服に努めようと思います。

御客様をお迎えして、聴いてくださる方に何かをお届けしようという意図で行われる「演奏会」は、何と言っても独特の雰囲気があります。私たちアマチュアの合唱団は「日々の練習を楽しむ」こと、つまり「歌うこと自体の楽しみ」のためにも活動しているわけでありまして、「演奏会さえうまくこなせれば良い」という考えで歌っている者はいないはずです。しかし演奏会がかけがえのない目標であることもまた、間違いのないところです。本番で練習以上の力が出せる、ということはありません。普段の習練の度合いが如実に出てしまい、それがストレートに御客様に伝わってしまう、という恐ろしい場所に好んで自分達を追い込むというのは、考えてみれば随分と酔狂な話ではあります。普段楽しみながら練習した成果がそのまま出てくれればこんなに嬉しいことはないのですが、多少なりとも「芸術」の領域に足を踏み入れてみたいという欲望を持てば、そのような甘い考えではやっていけないのは自明の理です。団員にはここ数週間、パートの立ち位置の配置を変えてみたり、振り方を変えてみたりと、ねばる指揮者が随分とわがままを押しつけてしまったと思います。この場を借りて団員諸氏に感謝するとともに、その努力が明後日に実を結ぶことを祈らずにはいられません。

それにしても、客演の皆様のあたたかいお気持ちには本当に頭が下がります。リハーサルというのは時間の限られた即断即決の修羅場でありまして、私はいつもここで緊張の頂点に達し、精神的なバランスさえ崩すことがあります(リハーサルの前1週間は、毎晩悪夢を見るのが恒例となっております)。リハーサルが始まるまでの数時間が、私にとっては一番心臓に悪い時間帯です。しかしいったん始まってしまえば、客演の皆様が、この未熟なアマチュア指揮者を支え、励まし、合唱団とともに、少しでも完成度の高い音楽を創り出そうと奮闘してくださるのです。リハーサルは、私にとって「もう二度とやりたくない」恐ろしい時間でありながら、「かけがえのない勉強の場」として私を魅了し続ける、摩訶不思議な存在であります。そして本番という濃厚な時間は、お聴きいただく皆様と音楽空間を共有し、今では死語となってしまうかの感がある「一期一会」を実感させてくれる貴重なものでありつづけるのです。

リハーサル、そしてそれに続く二度の「ダメ出し」練習を経て飛躍した私たちの姿をご確認いただけるよう、心して務めます。どうぞ皆様、明後日はお誘い合わせの上、川口総合文化センター・リリア音楽ホールに足をお運びください。団員一同、心よりお待ち申し上げております。


2018年2月9日
スコラ・カントールム代表
野中 裕

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