主宰者(指揮者)ご挨拶


当団の第8回特別演奏会「ヘンデル/《メサイア》全曲演奏会」終了から2ヶ月と少しが経ちました。その間もまたまたさまざまな仕事をこなさなければならない日々が続き、すっかりご無沙汰をしてしまいました。毎度の事ながら、誠に申し訳なく思います。そうは申しましても、無理をしても何も良いことがないのはここ数年の経験から明らかですので、今はとにかく「続ける」ことを念頭に置いて頑張りたいと思います。

10月21日に開催された第8回特別演奏会は、316名の御客様をお迎えして無事に終わりました。今回の演奏会はやや限られた時間の中で準備せざるを得ず、関係の皆様には大変なご尽力を頂戴しました。改めて御礼申し上げます。数々のハプニングにも冷静に対処していただいたオーケストラの皆様、少ない練習時間で合唱団のトーンに合った発音と発声を追究してくださった声楽ソリストの皆様、本当にありがとうございました。そして予想外の乾燥が会場を襲った当日、過酷な条件をはねのけて調律してくださった林彰見様にも、心からの御礼を申し述べたいと思います。

そして合唱団にも、最大級の賛辞を送りたいと思います。英語に全く不案内な私のリードで非常に不安な部分が大きかったと思うのですが、自主的に勉強してきてくれた何人もの仲間に支えられました。また、団員が協力して「惰性に流されず、自分たちが到達し得る最大限の発音」にまで自分を高めようとする意志を持ち続けてくれたことが、今回の公演では如実に結果につながったと信じております。素晴らしい団員に恵まれたことは、私の最大の喜びであり誇りです。

合唱団の力を引き出してくださったのは、間違いなく英語に関する事項一切を監修してくださった三ヶ尻正さんのお力によるものです。三ヶ尻さんは2回の講義を担当してくださっただけでなく、リハーサルにも足をお運びになり、合唱団にもソリストにも分け隔て無く、熱性溢れる指導をしてくださいました。三ヶ尻さんの御指導と期待に応えられる演奏にはほど遠かったのかもしれませんが、当団、というよりとりわけ私の英語作品に対するコンプレックスを取り除き、とにかくやれるだけのことはやり切った、と言える状態にまで持って行けたのはひとえに三ヶ尻さんのおかげです。

そんなわけで、私は皆様のお力を全面的に信じ、それをお借りするだけの立場でこの公演に臨んでおりました。私に必要だったのは自分なりの「メサイア」観と、若干の交通整理であったわけですが、これだけの名曲・大曲となりますと、未熟な私にはすべてが身に余るものであった、というのが正直な感想です。いつものことではありますが、本番が近くなりますと、毎晩、演奏が破綻する夢を見てはうなされます。今回はその程度も一際深刻だったのです。しかし当日は曲が進むにつれて、何だか自分が指揮しているのではなく、皆さんが出してくださる音楽に励まされることによって、自分が音楽を進めているという感覚に襲われました(これはバッハの「ミサ曲ロ短調」を指揮したときにも感じられたことです)。俗に「何かが降りてきた」と言われる瞬間がこれだと思います。そうした体験を可能とさせていただいた皆様に、再度御礼を申し上げます。そしてその感覚が、お聴きいただいた皆様にいささかなりとも届いていることを、心から祈ってやみません。

さて当団の2019年は「ハインリヒ・シュッツ」三昧の一年となりそうです。大それた計画かもしれませんが、およそ二年を掛けて、シュッツ畢生の名作である《宗教的合唱曲集》(1648年)の全曲を演奏することに致しました。その詳細につきましては、決定後速やかにこのホームページにて発表致します。もうしばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。また来年は佐藤雄一さんの指揮指導による「ヴォチェス・エクスプレセ」としての活動も再開され、第2回目となる演奏会の企画も進んでおります。30年目を迎える当団の活動に、今後ともご注目ください。それでは皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださいますように。


2018年12月31日
スコラ・カントールム代表
野中 裕

このページのトップに戻る